中国大陸の超級青魚

220cmの成長記録がある本場中国なら途方もない大物がいるはずですが、インターネットでも画像はさほど多くありません。ほとんどが漁の網にはいったものですが、中には釣りあげたものもあります。

魚の扱い方を見てもわかるとおり、日本でのような放流を前提としたゲームフィッシュの対象ではなく、生活の糧になったり、中華料理として胃袋に収まるのでしょう。いずれにしても、めったにない獲物と出会った喜びの表情が伝わります。

キーワードは郊外のダム湖

2000年以降、180センチもしくは100キロ級の記録は、江蘇省南京市の金牛湖安徽省明光市の石水庫の二湖が確認できます。共通点は丘陵地域の郊外に1960年代に作られたダム湖で、いずれも建設当時からに大量の四大家魚が放流され、かつ、建設以来完全に水が干された記録がない点です。

郊外のダム湖では、消費地である都市部から遠いため、漁をしても輸送費などのコストパフォーマンスが合わず、またたとえ漁網が行われても、その地形や水深ゆえに生き延びてきた個体が多く残されている可能性が高いと思われます。これらの湖での超大型の個体の年齢は40年以上と推測されます。

このクラスのダムは、揚子江デルタとよばれる江蘇省、浙江省、安徽省などには無数にあります。したがってこれらの記録もほんの一部、氷山の一角と思われます。大物の捕獲記録はまだまだ無数にあることでしよう。


*1斤=500g 1公斤=1kg

◆106kg、174cm(2004年9月19日 江蘇省南京市 金牛湖))

網で捕獲された212斤(106kg)174cm。現在画像がウェブ上で見られる最大級のアオウオです。記事
この個体の全長については184cmという報道記事もありますが、こちらに当個体の各部位の計測値が掲載されています。

*金牛湖では2004年6月にも180cm 92キロが捕獲されています。(写真ありません)

大人4人の握りこぶしが入ってしまう巨大な口。



ここまでのアオウオは中国でも珍しく、南京水産研究所によって、標本にされました。

現在、展覧館に展示されている106kgの青魚。

◆114kg、176cm(2005年7月13日 江蘇省南京市 金牛湖)


またも南京の金牛湖にて。現在ネットで画像で見られるものとしては最重のものです。
やはり標本とされ展覧館に展示されています。



◆179cm、88kg(2005年 安徽省明光市 石水庫)


2005年の初めに安徽省の石水庫で捕獲された179cm、88kg、胸囲126cm。記事
中国最大の青魚標本と報道されています。

◆181cm、83kg(2005年3月2日 安徽省明光市 石水庫)

181cm、胸囲125cm、83kg。
記事を読む限り、上の179cmと同一個体と思われます。(計測誤差によるものと推測)
有名な魚拓師である阿永氏により、魚拓がとられています。
 記事1 記事2


◆174cm、73.5kg(147斤)。 

これも安徽県明光市の石水庫で2004年9月6日に柳海氏(写真の赤いパンツの人)によって釣り上げられたもの。
現在、中国の釣りによるアオウオの最大記録とされています。

*中国の伝統的な青魚釣法は、7〜10メートル近い手竿を使用し、尻手ゴムロープを使用しての釣りです。手に負えないと思えば竿を放し、ロープの弾力で回収するという原始的なものです。

この魚も伝統的釣法によって釣り上げられました。針は伊勢尼17号にエサはトウモロコシ3粒。
午後5時にヒット、何度も水中で泳いで竿を追い、深夜に竿を三度も折られながら、仲間の竿と穂先の糸を結び替え、8人がかりで取り込んだのは翌朝4:40分。なんと12時間近くの大格闘劇。なぜ裸なのかも理解できるでしょう。
「八勇士」とたたえられた翻訳記事はこちらです。



◆170cm 57.5kg(115斤)

2004年10月10日、河南省泌陽県の銅山湖ダムで釣り上げたもの。胴回り92cm、竿は3.6m、針14号、エサはトウモロコシ(玉米粒)。2004年の秋の中国は超大物ラッシュです。
翻訳記事 1 


河南で釣り上げられた65.2kg。新聞記事はこちら
*体長は不明ですが、160cm台後半〜170cm級です。
165cm。
寧波の養魚池にて捕獲されたもの。
ニュース原文 翻訳


こちらは160cm、
57.5kg(115斤)

北京市の十三陵ダムにて



167cm、56.5kg

150cm

160cm



165cm80kg
寧波の東銭湖にて

仮説

中国での超大型記録は、日本の利根川水系ではほぼリミットと見なされる160センチ台とは違い、180センチ級、100キロ級が現実となっています。中国での大型個体の記録はいずれもダム湖でのものです。一方、現代の中国では急速な経済成長により、「河川」は環境汚染・魚資源の乱獲が進み、環境は厳しいという事情があります。

二つの仮説を考えてみました。

(仮説1)日中のサイズの違いはDNA?

日中のサイズの違いは、DNAの違いによるものかもしれません。移植後60年、数少ない個体での近親交配を繰り返すうちに、日本の利根川というスケール・事情に合わせた「日本の青魚」という「種」ができている可能性もあります。

(仮説2)河川vs止水域での成長サイズ

青魚は河川でのみ天然繁殖しますが、止水では産卵を行わないため、本来、生殖のためのエネルギーが魚体の成長に使われ、環境が適切ならば寿命も長くなると推測します。(この仮説がなりたつならば、日本の北浦や霞ヶ浦で180センチという記録がいつの日か突然飛び出すかもしれません。)


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