青魚を釣るということ。


〜このサイトで青魚(アオウオ)をはじめて知った方へ〜


●その存在自体がニュース。

青魚。なんともヒネリのない名前だが、DHAの豊富なイワシやサバではない。
「アオウオ」。途方もない魚である。

幻の巨大魚とは手垢のついた言葉だが、首都圏におけるこの淡水魚の存在とその大きさは、一般社会通念では信じ難く、疑問符と感嘆符が正直なところと思われる。マスコミにも紹介されるように、それ自体が報道に値するもの。(そして、江戸川・東京という記号によってさらに加速化される。)

それを狙って釣るということはさらに「尋常ならざること」だ。

●至宝の魚。そして魔性の魚。

釣り師にとっては、自分の身長に迫るその現実離れした大きさに加え、圧倒的な希少性と、魚としての形・色の美しさが大きな魅力になる。

その姿は幼い日に遊んだ小鮒やハヤといった日本的な川魚をそのまま鯉のぼりのようにした感じで違和感がなく、体色・風貌・体躯のバランスはやや神秘的なムードを醸し出すが、アマゾン的なそれとは違い、東洋的な繊細な美意識によく合うものだ。

まさに宝石のようなものだと思う。アジアの奇蹟、オリエンタルマジック。

では、なぜそんなに大切な魚を針にかけて釣るのか。しかも、食べるわけでもなく、写真を撮ったりして、川に逃がしてやるだけのために。しかも大変な苦労をしてまで。

ただ、釣ることだけが目的なのだ。より大きな魚をという、純粋な狩猟本能そのもの。説明しにくいが、それが釣り人たるゆえんであり、特にこのアオウオ釣りは最右翼だと思う。

狩猟本能といっても、食欲や生活経済に直結するものではない。オトコのコがより大きいクワガタやカブトムシが欲しいというのと一緒で、打算や計算のない純粋で単純なもの。

さらに古来より日本では、どこの川や池にもさまざまな「ヌシ」伝説がある。共通するのは常識を超える大型の魚であって、時には畏敬の対象となる神秘的な存在。
「ヌシへの憧れ、見てみたい、ふれてみたい願望」は少年あるいはオトコの心のDNAに宿るもの。。女性がダイヤモンドに憧れるように、アオウオの大きさとその数の少なさはこのツボを強烈に刺激してくれる。これは海の大物にない、淡水の大魚ならではの魔性の根源ではないかと考える。

理屈抜きの圧倒的で衝撃的で絶対的存在。釣りカテゴリーとしてのエッジの立ち方、その途方もない醍醐味は、私の脳内では淡水釣りの最高峰に位置する。モータースポーツでいえばF1、それくらいのもの・・・。

●アオウオ釣り、それは重いコンダーラ。

釣り方は簡単にいうとブッコミ釣り。要するにリールを付けた釣道具で、エサをつけて放り込んでおいて、あとは魚がエサを食うのを待つという「果報は寝て待て方式」の釣りである。

こう書くと実にシンプルだが、釣りの現実ははっきりいって大変厳しい。挫折と試練の釣りである。

なにしろ生息率はコンマゼロゼロ。

釣れない。めげる。だからといって、竿を出さない限り、可能性はゼロになる。
これを信じられる人だけが、続けられる。

「釣りとは竿の向こうに魚がいて、竿のこちらに馬鹿がいる状態」などと言ったのは開高 健氏だったか?だが、この釣りの場合は魚自体がそのポイントにいないことがほとんどではないかと思う。魚が一匹も釣れないことをオデコとかボウズなどというが、釣れること自体が珍しいのであって、そもそもこういう言葉はなじまない。そして、これほど時間効率の悪い釣りは世界でも例をみない。

私などはアオウオ釣りが趣味といっても、正確には川へ行ってアオウオを狙っての「竿出しが趣味」である。

●アオ師という奇特な人々。

鯉釣りの延長としてアオウオを狙う人は多くなった。反面、こればかりを通年専門に狙う奇特な釣り人を「アオ師」と呼ぶ。(「師」というのは、排他的な響きもあり、あまりいい言葉と思えないが、良い意味でのこだわりや、職人っぽさ、コアな感じは出ている。)釣り場が関東の一部に限られることもあるが、日本では実質数十人程度と思われる。

この釣り自体、まだ10年程度と歴史も浅く、ジャンルとしては認知されていないし、もちろん専用の道具などない。(しかし、潜在的ポテンシャルは大変大きい。)

どの魚の釣りにもすでに名人やら釣技が古典として確立しているが、この釣りは、自分たちで試行錯誤して切り開くしかなかった。逆に考えれば、こんな自由で可能性のある釣りはもはや日本には残っていない。私を動かしてきた原動力は実はここにあるのではないかと感じる。

とにもかくにも私はアオウオ一本で、この15年を生き凌いできた。


*「病、膏盲に入る」という言葉がありますが、その気のある人は取り憑かれると大変なことになります。ハマルとなかなか抜けられません。できれば、知らないほうが幸せですが・・・。よろしければ当サイトの全コンテンツをご覧ください。


HOMEへもどる