ハクレン倶楽部画像
ハクレンシルエット画像
ハクレン写真 これまた大陸より招来の愛すべき大魚。
祖先は戦中に東シナ海を越え、
利根の自然に育まれ大繁栄。

大陸風情のエキゾチックなマスクに、
伸びやかすぎる姿態、鷹揚な性格は
島国受けせず誤解されるが
ひとたびその繊細豪快な釣趣を知れば、
必ず魅了されるスプリンター。

見よ、この白銀の巨体を。
外道などとさげすんではもったいない。

【ハクレンとは?】

コイ目 コイ科 アブラミス亜科 ハクレン属

【和名】 ハクレン 

【俗称】レンギョ、シタメ、レンコ

【中国名】、白、竹葉

【英名】Silver carp(シルバーカープ)、
Silver loweye carp

【学名】 Hypophthalmichthys molitrix

利根川水系にて繁殖する中国四大家魚の中で、90%以上の比率を占める
最もポピュラーな魚。

体形的にはコクレンと酷似するが、口と頭が小さい。

天然餌料はプランクトン。体の構造からも固形物を摂ることはほとんどない。
アオコの除去目的で各地池沼に放流されている。

ハクレン写真

姿、風貌はソウギョ、アオウオとは全く異なる大陸的なもの。
丸みはなく側偏、体色は白銀、ウロコは細かく、コイよりも鮭に似た印象。
特に特徴的なのがその顔。
目の位置が顔の下のほうにあり一見上下が逆さのような
印象を受けるほど。シタメと呼ぶ地方もある。
口はやや受け口のおちょぼ口。

日本的な心象からはやや遠いものだが、美しい魚だと思う。

成長は早く、最大130センチ以上にはなるようだが、
利根川・江戸川では過剰繁殖のせいか、平均は80〜90センチ、10キロ弱程度。
100cmを越えればまあ大型である。小岩FFC最大は122センチ。

ハクレン写真
105cm。メーターを越えるのは立派。


【プランクトンイーターゆえの習性】

●海のプランクトン食の魚がそうであるように、群れを作って回遊している。
(プランクトンは水中に平均に分散しているわけではなく、多い場所も、少ない場所もある。群れをなしていればエサを発見しやすく、また、仲間の捕食音は信号となり、次々と集まってくる。)

 ●コクレンの動物性プランクトンに対し、植物プランクトンを好むといわれている。
(しかし、動物性プランクトンは植物性プランクトンを食べており、生息場所も同じなので植物プランクトンだけを選別することは物理的には無理かと思うが・・)

典型的な宙層魚であり、ごく表層で遊んでいるときも多い。通過するボートなどにおどろいて跳躍することもしばしば。(稚魚を飼育するときは外に飛び出してしまうことが多い)

●川では主流部の上層〜中層を群れを成している。流れの淀むところでなく、あくまで流心に近いところである。(川幅の中心という意味ではない。)岸近くの深いところにくる場合もあるが、群れの中心はやはりやや遠いところが多い。

●流れのある河川では上流を向いてゆっくり尾びれをふりながら、のんびりと巨大なエラブタを開閉させて水を吸いこんでプランクトンを摂取している。

唇は厚いゴムのような感じで伸び縮みすることない。特に下あごが頑丈で、U字型に太い骨が口先を取り囲んでいて、なめし革のようにじょうぶな皮でおおわれている。この下あごをシャベルのように使って底の珪藻土(プランクトンの死骸が堆積して粘土状になった土)などをすくいあげてなめるように食べるらしい。

産卵期(5月下旬〜梅雨末期)には利根川栗橋町付近まで一斉に遡上。
産卵群はごく表層を三角波を押したてて活発におよぎまわり、産卵行動を行う場合にはしきりに跳躍する。数十、数百の大群が同時に産卵行動をおこす瞬間は、利根川の川幅いっぱいが白波をたてて湧きあがる壮観さ。毎年、河原はカメラや見物客であふれ、出店もでてちょっとしたお祭り状態、地元マスコミもこの様子を伝える。
(この魚群の下にはほぼ同じ時期に産卵をするアオウオ、ソウギョもいるのだが、泳層が違うことから目にふれることはほとんどない)


【釣り魚としての魅力】

底に突っ込むことしか知らない底性魚と違い、流線形のシルエットをもつこの中層魚は、針にかかれば秒速10メートル以上の猛烈なスピードでダッシュする。本流の流心にのられればドラッグを滑らせ、スプールで火傷するほど。

ただし、スタミナはさほどはなく、弱るのは案外早い。
コイやアオウオが長距離ランナーとすれば、ハクレンは短距離ランナーだ。

その釣り方は練りエサの微粒子で寄せて釣る釣り。
群れを集めてしまえば、簡単にその引きを味わえる。
大陸原産の魚だけに、大ゴイのような気難しさはなく、余程の悪条件でない限り、機嫌よくエサを食ってくれる。ひとくちにいえば釣りやすい魚。
四大家魚では最も身近なゲームフィッシュ、おおいにチャレンジしてほしい。

【寄せて釣る釣り方】

その習性から、マッシュポテト等を主体にした練り餌でのウキ釣りが主流。
水に漂う粉餌の匂いで魚群を寄せて釣る。
要はヘラブナ釣りを巨大にしたものと思えばよい。
とはいえ、10〜20キロの大魚相手、もちろんリールの使用が前提。

専門釣技・理論は、故・小西茂木氏の研究により昭和40年前後に確立されている。

「淡水大魚釣り」「ソウギョ、レンギョリール釣り」等の著書にも記されたテクニックは
極めて高度な理論に裏打ちされた大変貴重なもの。
が、いまの利根川・江戸川でのハクレンの魚影の濃さは尋常ではなく、
さほど神経質にならずとも比較的簡単に釣れてしまうのも事実である。
この書からはそこにいたる思考プロセスとエッセンスを理解され参考にされたい。

淡水大魚釣り


【シーズンは通年。寒レンギョもまた格別】

産卵期(利根川水系では5/20〜7/19までの2ヶ月間は禁漁。)を除いて、通年釣れる。
好期は4〜5月、8〜10月ごろまでが最も釣りやすい。
寄せる釣りなので、この魚がいる河川や湖沼の大場所で、
比較的水深があるところをえらべば、場所もさほど神経質に考える必要ない。

江戸川では春から夏はタナも浅く、どうしても小型のものが寄りやすい。
私は晩秋から冬の底釣りをしている。この時期は数は出ないが、型がそろう。
(90〜1m超の大型の魚群と、7〜80センチの中・小型の魚群は
生息場所も、わかれているのではとの推測もある。)

水深5メートル以上の寒中の底釣りはまた、格別。
付き場さえみつければ、1メーター前後の大型が揃う。
ウキを消し込んでいく暖期とは異なり、かすかなアタリをあわせる醍醐味が味わえる。

北篠崎テトラ
江戸川右岸・北篠崎テトラは晩秋以降の大型のポイント


【リールと遊動ウキを使用した仕掛け・タックル】

1m、10キロをターゲットとして用具・仕掛けを作る。
リールを使うが、釣りのスタイルがヘラ釣りに近いので、
周辺用具はヘラの台や竿かけなど用意するとラク。

  • ●竿・リール
    磯竿3号程度、リールは中小型の両軸タイプ(アブでいえば、5000〜6000C前後)に道糸8号前後を巻く。
    (ドラッグ性能からいえば最近のスピニングでもいいが、中層のウキ釣りなので糸の撚れでウキが次第に引き寄せられるなど不都合もある。糸撚れがないという点ではPEラインでも良い。) 
  • ●その他基本用具
      腰掛けて釣るのでイスがあるといい。できればヘラ用の折畳み釣り台が便利。またヘラ用の竿かけ、竿受けがあると便利で疲れない。練りエサのボールなども忘れないように。
  • ●遊動ウキ
    このレンギョ釣りで特徴的なもの。形状としてはヘラウキかチヌのものを想像してほしいが、理想要件としては視認性と実用性から次のようなもの。
                                              
     ・トップが15〜20cmとボディーが細身で全長40〜60cm、
     ・オモリ負荷2号〜4号程度の浮力がある、遊動タイプ。
     
     ただし、このスペックでは、実は市販ではなかなか手ごろなものがない。
     磯用の最近の鉛入りの「自立式」のものは食い上げのアタリがとれない。
     昔は磯用で、孔雀羽のいいものが市販されていたが、最近はみかけない。
     田舎の釣具屋などで残っている場合もあるのでそれを探すのも楽しい。

  •  手ごろなものがなければ、下記の要領で自作するのもおもしろい。
       
  1. ボディは市販の発砲素材(10もしくは12mm)を25〜30cm。加工は容易。風呂場などで浮力調整して長さをカット。上下を好みの形にヤスリで仕上げる。芯の穴があいているので、下部には小型スイベル、上にはトップを取り付ける。
  2. トップは市販の2mm径くらいの透明のセルパイプを蛍光塗料で3cm間隔に塗るか、ヘラ専門店で極太のロングトップを購入。肝心なのはグラス材等を芯としていれること。ロングウキへのアワセのショックややりとりの時に折れやすい。
*レンギョ用遊動ウキに参考になるページ
http://www.xnet.ne.jp/fish/dougmk/ts1067.htm (キザクラのチヌウキ)
http://www2.tba.t-com.ne.jp/dangodan/uki-zairyou.htm (チヌ団子釣り用自作ウキ)
http://www.h3.dion.ne.jp/~noritake/uki/ukitukuri.htm(かや素材ウキの作り方)
http://www.xnet.ne.jp/fish/dougmk/cat110.htm  (自作に必要な塗料など)


  • ●仕掛けの構造とポイント
    上半分は磯で遊動ウキを使うための構造、下半分はヘラ仕掛けをミックスした構造と考える。各パーツは釣具屋ですべてそろうはず。
  1. 遊動ウキは道糸に木綿の糸止めセル玉ウキを上下につけて止めるしくみ。
  2. 先糸は道糸より一段落としたもの。浮力にあった中通しオモリを通す。長さはウキの長さより長くとること。トップがぶつかってしまう。
  3. ハリスはヘラと同様の考え方で長短の2本針仕掛け。20cm、25cm程度でいい。それぞれ上針、下針と呼ぶ。
  4. ヘラ用テンビン(ナイロンミツマタ)で大型のものがあれば絡みが減る。強度に注意。
  5. 針は伊勢尼13〜15号、チヌ8〜10号くらい。針のアゴをペンチで潰すなどしてバーブレスにすると刺さりが良くリリースも簡単。私は「ダム専用へらサイト」18号という巨べラ用が気に入っている。
  6. 針にはエサ脱落防止のために針の軸にチヌ用のスプリングを装着するといい。釣具屋でみつからなければ細い銅線などでもいい。
  • ●エサ
    釣り用の「マッシュポテト」をベースにする。釣具店の練餌のコーナーで入手。好みでグルテンや配合エサなどをまぜたり、バラケ、食わせそれぞれ工夫するのもおもしろい。量は最低1kg以上を用意したい。スーパーで売っている「米糠(コヌカ)」は、バラケ具合も集魚力のある添加剤として、コストパフォーマンスが高くお勧め。
    タックル
    台湾でコクレンを狙ったときの私のタックル

【ハクレン釣技の実際】


タックル
  • とにかく寄せること。どんどんコマセで寄せる。沖にいるレンギョを近くまで引き寄せ、釣りやすい距離で勝負する。

  • 釣技はバス釣りのキャスティング、ヘラ釣りのエサ・タナ・アワセ、コイ釣りの引き合いまで総合的な淡水釣技のミックスであり、いずれかの経験があるならばなお楽しく、もちろんここからはじめてもおもしろいともいえる。また、野球をやっていれば、コマセをボール大ににどんどん投げこめばいいし、難しく考えず人それぞれの釣りの楽しみ方を見つけるのもいいと思う。
  • @宙釣りではまずタナとり。泳層がもっとも肝心。
    ヘラ釣りでは基本のテクニック。
    1. 釣り場をきめたら、まず針にオモリをつけるなどして水深をはかる。
    2. その際、空針でのトップの目盛りを確認しておく。(エサ落ちの位置を記憶)
    3. 春秋なら水深の半分くらいに、晩秋〜冬は底にあわせて釣りはじめる。

  • A寄せに徹するエサづかい。
    エサは寄せの命。それなりの量を惜しみなく使う。
    1. まずはバラけるエサをピンポン玉くらいに両針につける。
    2. テニスボール大を投げるか、コマセひしゃくなどで投げこんでもいい。
    3. アタリが出始めたら、少し練りこんだものを食わせとして小さく下針へ、バラケはそのまま大きめのものを上針へ。
    4. ウキの目盛りでエサ落ちを把握。まず上針が溶けて、そして下針が溶けて空針になる位置を見ること。

  • B寄せに徹した打ち返し。次第に近くに。
    同じ線上に投射する。座ったままできるようにしたい。
    1. まずは20メートルくらいの距離を決めて投射。
    2. 1点をひたすら打ち返す。(1分間隔くらいでいい)
    3. 剣道の面を打つ形で真上からふりおろせば方向が狂わない。竿掛けがあるならばそれを方向の目標に。
    4. 投射はエサを飛ばさないよう、そして音で寄せる気持ちで柔らかく着水させることに留意。スプールを水面上で止めるサミングが肝心。
    5. 左手で竿尻、右手でリールのサミングをできる投げ方をマスターするとより確実。(バスのベイトをやっていた人なら簡単。)
    6. アタリが出始めたら、だんだん距離を近づけ、魚群を手前に寄せてくる。理想はウキが竿先のすぐ先にある状態。

  • C「ツン!」アタリであわせる。
     その日のアタリのパターンはいろいろあるが、基本は次のとおり。
    1. 春〜秋は消しこみのアタリもあるが、フワフワした前触れにつづく「ツン」がアワセどき。食い上げもアワセどき。
    2. 晩秋〜寒期の底釣りはアタリが渋い。わずか数ミリだが、やはり「ツン」を待ってあわせる。

  • Dやりとりとフィニッシュ 
    時期にもよるが、スタートダッシュは凄いから心しておくこと。
    1. メーター級のものは根がかりしたようにしばらく間をおいて走り出す。
    2. コイのようにカカリに入ることはなく、中層を走る魚だから、あせらずにドラッグ調整しながら満月にしぼり込む大魚の引きを楽しめば良い。
    3. できれば座ったままできればスマート。竿と糸の角度をたもつことが大切で、左に走れば右に竿を倒し、右に走れば左に倒す。
    4. 最後はやはり四大家魚特有の「往生」をする。まだパワーは残っているから網に入れるまでは決して気を抜かないこと。
    5. 網の中で針を外し、即リリース。できればバーブレスフックにしておくとスムーズ。
      北篠崎テトラ

【最後に: 誤解と偏見を超えて】

残念ながらこの魚、外来魚ゆえの偏見、その数の多さゆえ、利根川水系ではやや軽蔑を含めてレンコなどともよばれている。

プランクトン食性のレンギョはヘラブナ釣りの仕掛けにかかることが少なくない。竿を折ったり糸を切っていくため、好印象をもたれていない。

レンギョにしてもこのようなヘラ師の竿になどかかりたくないだろうが、食性が同じなのだからどうしようもないのである。レンギョがかかるとこのレンコめとののしられ、ギャフで刺したり地面にたたきつけたりする人がいる。悲しいがこれが現実だ。ウジがわいて悪臭をはなっている魚体を見かける。そのたびに悲しくなる。

私も釣り師の「業」は理解できるから、その一尾のレンギョが可愛そうという青臭いことをいうつもりはない。自分で自分の釣り場を汚す、自分が住む国土を汚すことにきづかないのが悲しい。狭小な心の島国の釣り師とはなかなかわかりあえないだろう。とにかくレンギョに罪はない。

 しかるべきタックルで専門に狙ってみればこれほど面白い釣りも少ない。
そしてその繊細と豪快さを兼ね備えた釣趣の素晴らしさを痛感するはずだ。
この魚、もっと見直されてしかるべきと感じる。

一日で、重さ10キロとして10尾、つまり100キロ以上の釣果を得ることも夢ではない。
一日一寸はおろか、一日30尺の釣り。淡水大魚の入門には最適である。

資源としての大魚は壮大な原生林にも劣らぬ資源だ。そもそも中国大陸からこの魚を招待したのは愛好家でも、業者でもなく、日本という国家である。戦後の時代は終わり、国民のタンパク源需要としてはその初期目的を終えた。今、水産資源としては白身魚としてすり身の活用が進んでおり食卓にもはいっているらしい。、たとえば大手弁当チェーン「H亭」の白身魚フライはレンギョだというし、あのハンバーガーチェーンのフィレオフッシュもそうかもしれない。まことに結構なことだと思う。

が、ことレンギョという魚の社会的ポジション、あるいは釣り対象魚という視点でみると、30余年前に小西茂木氏が夢みたような21世紀は悲しいことにきていない。私が子供のころ淡水大魚釣りを夢見て憧れたのはもちろんレンギョ。まさか現実に釣れるとは思ってもいなかったアオウオとの扱われ方の違いにはとまどうばかり。この両者、私の心には同列なのだが。

日本は豊かになったが、いまだに心は島国だ。特に釣りは。利根川という四大家魚を育める川をもつ国民として、この魚が愛される日を夢見たい。そして大陸より招来のゲストに尊敬をこめて豊かなこころでこの大魚に接したい。

「誇り」ある日本国民として、レンギョはせめてやさしくリリースしてほしいと、切に願う。


〜故・小西茂木さんに敬意を表して〜
私の淡水大魚への異常な思い入れや、特にこのページで紹介したレンギョに関する情報は、子供の頃そらんじることができるほど読んだ「淡水大魚釣り」の影響を受けております。ただし、釣技などは完全に忠実なものでなく、今の利根川水系でのレンギョに最低限必要と思われるエッセンスだけをピックアップして私なりにアレンジしています。今は魚の数と道具がカバーしてくれるわけですが、氏の理論・テクニックははるかに高等なものです。それにしてもすでに30年以上前の研究・理論・情熱、そして表現者として、氏の偉大さを痛感せずにいられません。

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