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呑口氏のソウギョ
小岩FFC初代会長、呑口氏の118cm
知名度では四大魚中ナンバーワン。
草を食む不思議なベジタリアン。
忍者のように岸辺に忍び寄り、
葦をむさぼる大食漢。


剛竿を引き倒すビッグファイター。
そして狡猾なゲームフィッシュ。

これまた淡水大魚ファンのよき好敵手。

【ソウギョとは】


コイ目 コイ科 ソウギョ亜科 ソウギョ属


【学名】 Ctenopharyngodon idella

【和名】 ソウギョ(草魚)

【中国名】草魚 【英名】Grass Carp(グラスカープ)

利根川水系だけで天然繁殖している中国四大家魚のひとつで
ハクレンに次いで数は多い。
(戦中の移植当時の4魚種の比率は、ハクレン90%、ソウギョ10%、
アオウオ、コクレンが1%に満たないとされ、現在もさほど変化はない)


草魚という名前が示すように水草・草類を好んで食べる習性がある。

羽生水族館のソウギョ

昭和30年代には埼玉水産試験場が人工受精に成功、種苗生産が行われ
水草の除去目的などで皇居のお濠をはじめ各地の池沼河川に稚魚が放流された。
そのためか知名度だけは比較的高い。

その体形、ウロコの色ともややコイに似るが、ヒゲはない。
体は、より円筒状で断面に丸みがあり、背中は盛りあがらず直線的、
ウロコは、縁がやや黒く、より直線的な配列で網目模様のような感じ。
背ビレは付け根が短く、三角状。
頭部は上からみるとボラのように偏平で丸い。

魚雷かミサイル弾のような頭部。 ピッタリ閉じる口
ソウギョの頭部形状 ソウギョの口の形状

また、コイの伸縮する軟らかい口先とは対照的に、
唇は硬く、上下がぴったりと隙間なく閉じるようになっている。
(その唇だけでアシの葉と固い茎を噛み切る。鋭利ではないが触るとざらざらしている。)

暖期のソウギョは、草をたらふく食べているせいか、
腹がパンパンに膨れたものも多い。
また、匂いが青臭い感じがする。

ただ、岸辺に豊富に草があるのは4〜9月。
一年の半分しかないから、彼らにとっては刈り入れどき、ひたすら食いまくる。
幸せの饗宴は以外に短い。

成長は早く、4〜5年で1メートルを超える。
江戸川で165cm(1981年)が釣り上げられた記録があるように
ごく稀にはアオウオに近い大きさにもなるものもあるようだが、
実際に釣れるのは1m前後が平均的なサイズで、圧倒的多数。
(小岩FFCの過去10年で、最大記録は125cm。
統計では90〜110cm前後が90%以上。115cmを超えれば大型といえる。)

呑口氏のソウギョ125cm
ソウギョ125cm 平成9年5月 江戸川病院下にて呑口氏


【その特異な習性】


中〜底層を回遊し
水草の他、イネ科の植物を好むとされる。

江戸川では、草が萌え、川べりのアシが背丈ほどに伸びる5月頃から
水深数十センチの浅場にエサを食みに寄ってくる。
さながら敵地を内偵する潜水艦のように。

総武線鉄橋下 アシの茂るソウギョのポイント

観察経験では、特にアシの茂るエサ場を
中心に半径100m程度以内に棲み、
あたりが静かな時に一日数回、岸辺に寄って食べている。
大変な大食漢で一度に数キログラム位はむさぼると思われる。

エサの食べ方はその巨体に似合わず実に繊細でスムーズ。
柔らかい葉の部分はそのヤスリ状の口ではさんで噛み切る。
固い茎の部分はくわえてから少し前進して少し体を捻って折り、
ゆっくり後退しつつ器用に切り離すか、
あるいは器用に横に倒し、水面に横たわった葉から食べていく。

夜の岸辺でガサガサ、ブチッと水辺で音が聞こえるのは
やや無気味だが、その正体はソウギョだ。
覗けば魚体が見えるところまで岸に近づいてくるのでポイントも絞りやすい。

私たちのクラブでは、アシの葉で釣る草針釣りが主流。
この魚も例にもれず、釣るだけが目的、キャッチアンドリリースの釣りだ。

これが草魚の食み跡。
*クリックで拡大します。

【草の葉で釣るゲームフィッシングの魅力】


イモやパンのブッコミによるコイ釣りの外道で釣れることもあるが、
習性を利用し、アシの葉で釣る「草針釣り」に大きな醍醐味がある。

川辺にある草の葉を針にかけるというだけでも
釣りの既成概念を打ち破るに十分だが
岸からわずか数十センチのところで釣る驚異。
巨大魚を足元で釣るというギャップ。

特にその草針を水面に浮かせる「浮かせ釣り」は究極。
ブラックバスのトップウォーターの迫力と、
渓魚のテンカラにも似た独特の釣趣。
豪快さと繊細さをあわせもった駆け引きの釣り。

外道は絶対に来ないし、
エサは岸辺で調達だから、手軽このうえない。

ただ、この釣りの様子をはじめて見た人は確実に驚く。
知らない人からみれば、葦原の茂みでひとり釣竿に草をぶらさげている図は大変怪しい。
釣りとしては他に類を見ないものだが、この魚の習性を考えれば合理的で自然なのだ。

夕涼みを兼ねて釣る夏の夜釣りはまた格別。
草いきれのアシ原をかきわけて、蚊をよけながら。
ソウギョ、私のイメージでは夏の季語。

しかし、背びれがでるほどの浅場に来ている大魚の警戒心は半端ではない。
時には音もなく忍び寄り、針の数ミリ先で葉を噛み切って
釣り人をいらつかせる知能犯でもある。

巨体の強引さだけではなく、
この駆け引きが釣り人の心をとらえてはなさない。
その奥深さ、一度やれば確実にハマる。



【草針浮かせ釣りの具体的技法】


わが小岩FFCの呑口元会長は10数年前に確立したこの釣法で
コンスタントに年間50本以上を釣り上げた。
以下は直伝のエッセンスを紹介する。


「浮かせ釣りとは」
2〜3枚のアシの葉をとり、横にして3点針を葉に埋め込むようにかけ、
笹舟のように水面に浮かせ、静かにアタリを待つ釣り方。

草針の釣法はいろいろあるが、これは、極めてダイレクトな釣趣が味わえる。

浮かせ釣り仕掛け 水面にうかべたところ
2〜3枚を重ねて、針を葉に並行に縫い刺す
(針は決して立てないこと。)
浮かべたところ


針の刺し方解説〜針を立てないように縫い刺す】
@葉を用意 A針を刺して、 B反転して固定 C完成

アシの茎の最上部の2枚を採り重ねる。
茎は5cmくらい残す。

重ねたまま、繊維に直角になるよう、まず針のフトコロ幅で縫う。

針先を反転させて縫って固定する。繊維の切れ目に注意。
針先を軽く出す。

B葉先か茎のどちらから食ってもかかるよう、針先の向きを変えて。
*特にBが意外と難しい。反転させるコツが掴めるまで練習が必要。


●竿は1〜2本用意。アオウオほどのヘビーなものは不要だが、それなりの大魚を相手なので
 磯竿の3号以上、リールは両軸で道糸は8〜10号程度は欲しい。

●基本的に上げ〜満潮時の釣り方。
  汽水域では潮時のタイミングを見て釣行すれば勝負は早い。
  周囲が静かなことが前提なので、早朝や夕方〜夜がベスト。
 (ただし、潮位が低いときは岸辺に寄らないので、軽く投げて沈めることもある。)

●ポイントは岸辺にアシの茂っている場所。
 水深は50センチもあれば釣れるが、近くに深場があれば、より大型が期待できる。

ソウギョのポイント

水面を向いたアシの葉先を見て、
ギザギザになっていればそこはソウギョの食み場。
切り口が新しければ確実にソウギョは居る。
草の繊維の絡みあった楕円形のフンが見られることもある。


@釣り場を決めたら、岸辺のアシを数本、葉先が水中に入るよう根元から倒し、寄せ餌とする
数本を束ねて細いヒモで縛って浮かべてもよい。いずれも岸から1メートル以内とする。

いかにソウギョでも、岸辺に垂直に生えているアシを倒して食べることは容易でなく、
こちらから水辺に倒してやることで、ソウギョが楽に食べられるようにしてやる。
回遊してきたソウギョはこのエサを一心不乱に食べ始める。
エサに夢中にさせることで警戒心をゆるめさせるのがポイント。


A仕掛けを川岸から1〜2m以内で、竿の真下に垂らして、「笹舟」のように、水面に浮かせる。
(倒したアシの葉先に近くに浮くよう、置き竿の位置・角度を設定し、
釣り座から下がってアタリを待つ。ドラッグを緩めにしておく。)

危険を覚悟で浅場に寄るソウギョは非常に警戒心が強いので、
身を隠すように下がってアタリを待つ。とにかく音を立てないように注意して
忍び足で移動すること。竿先に鈴をつけるのもおすすめできない。
夜ならば穂先にケミホタルを付けるのもよい。

Bアタリは、ほとんどの場合、静かに葉をくわえ、沖のほうへもっていく。竿先をよくみていると、
かすかな前触れのあと、竿先が静かに締め込まれていく。
30cmから50cmくらい押さえ込んだときに大きくあわせる。
(ソウギョの唇は堅いので強くアワセをいれること。)

岸でかけたソウギョのダッシュは相当なもの。
激しい水飛沫とともに沖に突進していくからドラッグを活用してやりとりをする。
横に走られたら反対側に竿を倒して応酬する。
なかにはあっけなく寄ってくる場合もあるがスタミナは残っているので、
玉アミにいれるまでは気を抜かない。

ソウギョ写真 ソウギョ写真
この釣りの性格上、夜釣りで釣れたものが多い。お腹は草でパンパンだ。



【スレる理由とその対処】


はじめてのこの釣りを行うポイントやシーズン当初はほとんど食い込むが、
同じ場所で数匹釣ると、学習してスレてくる。
アタリがきても針の寸前でかみ切られるということが何回もつづいて、
頭を捻ることになる。

これをどうクリアーしていくかが、この釣りのおもしろさなので、
細かくはあえて書かないが、下の仮説要素を念頭において、
おのおのフィールドで工夫・研究されたい・・・

●数匹でテリトリー。

半径100mくらいをテリトリーに棲みつくようだ。
単独ではなくペアもしくは数匹で行動しているのではないか。

→1ヶ所である程度釣ったら、ポイントを替えてみることも大切。

●固い唇の敏感さ。

魚の口には神経がないといわれるが、
ソウギョの固い唇には神経があるのではないかと思われるほど敏感。

→いかに金属の針を感じさせないように葉に刺すか。
葉の枚数、針の向き、針の縫い刺し方・・・・


最後に:キャッチアンドリリースの徹底を

ハクレンとならび、淡水大魚のエントリーにも狙いやすい魚である。
勝負の早さもダントツで、アオウオのような超大物相手の
竿さばきのトレーニングにも格好。

ただ、絶好のポイントとなるアシ原も、江戸川においては現在、護岸工事等で減少傾向にある。
釣り師にとっては厳しい現状を目の当たりにしているが、個人の力ではどうにもできない。

せめて釣り上げたソウギョを殺さない限りは魚の減少は押さえられる。
いつまでもこの素晴らしいファイターと出会いつづけるためにも
ぜひともキャッチアンドリリースは守っていただきたい。


*このページの監修は小岩FFCの創設者 呑口(のみぐち) 仁氏です。
同氏は30年以上のベテラン石鯛師でもあり、
江戸川のフィールド観察からこの釣法を開発されたソウギョ釣りの第一人者です。

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