青魚釣りの基本セオリー


江戸川における私のアオウオ釣りの概論を紹介します。(鯉釣り経験者対象)

*写真はクリックで拡大します。


江戸川の標準的なセオリーをまとめてみる。日本におけるアオウオ釣りには教科書は存在せず、基本は鯉釣りをベースとしたぶっこみ釣りで、まったくの手探りからはじめた地域の諸先輩のノウハウや私の経験則のエッセンスである。(鯉釣りがそうであるように、地方・時期・場所にあわせて実際はもっと多用な応用・工夫があるが一般的でなかったり、未検証のものが多い。)したがってこれはマニュアルではないのでご注意願いたい。

*以下は廣済堂「別冊フィッシング 大ゴイ倶楽部97」に私が執筆した内容に加筆修正した。

●春・秋のシーズンがチャンス

真冬のゴカイで大釣りもあれば、真夏の夜釣りでも実績はあるが、統計的には活性の高い3月中旬〜5月中旬、そして秋の10月中旬〜11月下旬が超大物のチャンス。

強いていえば、水の不安定でムラのある秋よりも、春のノッコミ前が安定。桜前線が近づき水温が15℃を超える3月末から、新緑のGWあたりがベストシーズンと思う。

●タックル・仕掛けは高品質・気配り・シンプル

道具は標準的な大鯉用のタックルなら十分。(竿は磯竿5号クラスか石鯛竿。リールはパワーのある両軸タイプのほうがより安心。)余裕があれば、2〜4セットをまとめて購入する。

ミチイトはナイロン10号〜18号、遊導式の捨てオモリ仕掛、ハリスは新素材の10号程度に、ソイ針22号〜24号を1本または2本結ぶ。 このくらいのスペックがあれば、仕掛けの構造自体にはさほどセンシティブになる必要なく、 釣るポイントや個人の納得でいいと思う。

大事なのは形ではなく、どうしたら新品の性能と品質を維持できるかという基本に注意をはらうこと。一生で何回あるかわからぬチャンスを悔いをのこさないようにしたい。
1.多少高価でも品質のいいものを選ぶこと
 ex.ミチイトは吸水性が低く、対摩耗性の高いものを選ぶ。石鯛専用の糸などにいいものがある。
2.新品の強度を保つ工夫をすること。
 ex.ミチ糸の傷は当然ながら、結節部分、針先には十分すぎるほど気を遣う。
3.極力シンプルな構造とすること。
 ex.2本針はバラシが少ない。しかし、絡む、空針が根にかかる、タモにかかるなどリスクを考えること。

 ★私の仕掛けはここをクリック

この他、丈夫な竿掛けと、大きなタモ網(枠径80センチ、網の深さは120センチくらいは欲しい。)がマスト。
写真記録用に工事用のメジャーなどあれば便利。


●エサはタニシかカラス貝

江戸川下流の場合、冬期はゴカイにまさるものはない。

また、イモヨーカンや、 最近は食パンでも釣果を得ているが、通常のシーズン、的を絞ってアオウオだけを狙うなら、淡水の貝類が良い。生態上からもアオウオのベーシックな主食である。

●タニシ


タニシ

採取の手間さえ惜しまなければコストゼロで、餌持ちも良く、もっともオールマイティーなのは タニシ

マルタニシヒメタニシ(通称カワタニシ)があるが、食いは変わらない。専門に狙うなら、なるべく大粒のもののほうが、外道の鯉に悩まされなくて済む。

エサとしては殻ごと針に刺して使う。「身がけ」の場合、1〜2個、ヘタの隙間から筋肉のところに刺す。遠投や流れの速い場合は、千枚通しなどで穴をあけて「殻がけ」にする。いずれの場合も、針先をしっかり出すこと。


*タニシは水中で殻から身を伸ばして這い回る。水中の石など貼り付くものがあれば、一定の方向に向く。

@身が伸びると、フタは180度向きが変わり、背中の位置になる。

A上下でいえば、タニシは口を上に、フタのある背側が下になる。

だから、針は無造作に刺してはならない。バケツの中などで身がどの方向に伸びるかをよく確認して、背中側に針を抜く位置を考えることが肝心。根がかり(針先が底に向かう)や、すっぽ抜けや掛けバラシ(フトコロに殻が干渉)の原因となる。

*コマセとして播くと、集魚と餌付け効果もある。(ただし、外道の鯉も集まることは覚悟)。撒く場合は、磯用のヒシャクよりもプラスチックの園芸用スコップが使いやすい。塩ビパイプなどの柄をつけると遠方のポイントにも飛ばせる)

*2〜3ケ月保存が可能。保管する場合は、網などに入れて乾燥させると冬眠(仮死)状態となるので、日陰においておく。気温の高い時期はタッパ−に入れて冷蔵庫使用が無難。(ただし、新聞紙等でしっかりと水分をとり、表面が乾いてから入れること。)

●カラス貝


カラス貝(ドブガイ)

タニシを入手できる環境になければ、金魚店などでカラス貝を買い、剥き身で使う。

この二枚貝はタナゴの産卵に必要なものであり、タナゴのいる水域なら自然採取できる可能性がある。厳密にはカラスガイ(丸く大型・殻に緑黄色が入る)とドブガイ(やや長細い、黒褐色)があるが、食いは変わらない。いずれにしても甲長7〜8cm以上の厚めのものを選ぼう。

市販の貝剥きナイフで開き、堅めの部分に針を刺し、針先をしっかり出しておく。


*小型のアメリカナマズ、ブルーギルなど、肉食外来魚が多数繁殖している利根川本流では餌持ちが悪いので、稚貝を殻ごとさすのが良いとされる。江戸川では剥き身で問題ない。

*保管はエアレーションをした金魚の水槽などで数ヶ月飼えるが、次第に身がやせてくる。また、一匹死ぬと水質が極端に悪化し、全滅の可能性があるので、死んだらすぐ捨てること。高水温時は特に注意。

●魚屋で売っている大粒のシジミでもいい。剥き身を5〜6個さすか、殻に穴をあけて木綿糸などで縛る。(以外に殻が堅く、穴あけ時に割れやすいので、工芸用のミニルーター(乾電池式)などの使用がベター。)

●その他、未検証だが、江戸川では夏を中心に手長エビが有力な主食とも思われ (ウナギなど外道多く、餌持ちには難あり)、その意味ではザリガニなども使えると思う。また、時期によるが、夏以降のハゼや、春の稚アユもいけるかもしれない。


春の稚アユ・・

これはあくまで私の個人的推測だが、青魚は、鯉ほどにエサに神経質とは思えない。なにしろ食べないとその図体がもたないはず。だからその時期その時期でふんだんにある動物質のものならば食べているのではないか。たとえば春の江戸川を利根川に向けて遡上する稚アユとか。もっといろいろキワモノ的なものを試してみたいのだが、あまりにアタリが遠く検証しきれないのが残念である。ただし、保存性などから考えるとやはりタニシが現状はベストとはいえよう・・

さて、タニシは90年代のアオウオの専売特許だったが、2001年には北浦・霞浦でのコイ釣りでも大ブレイク。メーター級の巨ゴイラッシュとなったのも記憶に新しいが、折からのタニシブームに着目したエサメーカー「マルキュー」より2002年春にコイ用の配合練りエサが発売された。関東ではタニシの乱獲もすすみ、激減が叫ばれる昨今、歓迎したい。アオウオ用にも寄せエサと割りきって使用する手も考えられるが、流れのある利根川・江戸川本流でどれだけ受け入れられるか??


●ポイントはカーブを釣る

利根川・江戸川の場合、流れがあたる「横のカーブ」の外側。そのようなところは同時にカケアガリの 「縦のカーブ」をもっている。河川修復でわかりにくくなっている場合もあるが、要は 石積み、テトラ、乱杭があるところ。


北小岩柳
(乱杭と石積み)

北小岩柳下手
(乱杭)

市川・国府台
(テトラ)

北篠崎
(テトラ)

●「抜ける」付き場に投げる

前述のようなポイントではコンディションの良いときはモジって背中を出す(これを「抜ける」という)ので、 投餌点はそこを狙うのが一番確実。ポイントにより付き場はほぼ決まっているのでよくインプットしておこう。そこは絶好の カケ上がりや、水流の変化があるところである場合が多い。

大潮のソコリなどに地形を良く見ておくと参考になる。まったくわからなければ、よく水面を凝視し、 渦流線を目印に投げ、着底したら少し引いてみて、重くなるところで餌を止める。

●汽水域では午前の下げ潮が地合い

江戸川下流では汽水域のため、潮の動きが釣果に影響し、特に 下げ潮時が勝負。(篠崎の水門の開閉次第。開かない時はまず見込みがない)

夜釣りに分のあるポイントもあるが、多くのポイントで、ヒットの時間帯は 早朝から午前中に実績が集中している。

●ドラグは緩めにして待つ

リールのドラッグは緩めに、クリックを入れておくのが基本。

だが、初心者の場合や、手前に障害物があり、沖に走らせることが必要なポイントの場合は、 事前にドラグ強度をセッティングしておき、クラッチを切ってフリーの状態でクリックを入れておく。 (あとから締めるよりも慌てずに済む。)

●早合わせは禁物

アタリは餌にもよるが、タニシの場合は一気にもっていくことが多いので、 完全に竿が入った頃合いを見て竿を立てる。無理な合わせは不要。

カラス貝の場合は、鯉のように性急に持っていくことはまれで、「フワリ。フワリ」というやわらかな 締込みの繰り返しが典型的なパターンで、やがて穂先が50センチ〜1メートル以上はいるか、 糸フケが出るまで待って合わせるが、絶対に早合わせは禁物。

●ドラグは締めて、至福の強引を楽しむ

ヒットしたら底を這う重量感との長い戦いがはじまる。
ポイントにもよるが、アベレージで15分、超大物では1時間を超えることもある。

最高に幸せな時間だ。鯉と違って口切れの恐れは少ないし、思いきってドラグを締めて、自分の仕掛けを信じて力一杯戦いを楽しもう。 怖がってドラグずるずるでは釣趣は半減するし、トラブル、リスクも増える。 豪快さは国内の淡水では他に味わえない醍醐味、コイと比べて引きが云々という声もあるが、 比較すること自体がナンセンス。(同じ大きさのコイがいれば別だが。)


引きずられる感触を楽しもう

キリキリと竿がきしむ。

やりとりは、竿と糸の角度を保ち矯めを聞かせる。

竿を上に立てるばかりが能ではない。 コイほど横走りは少ないが相手が横に走れば反対側の横に倒すのが正しい竿さばき。 どうしても止まらない場合も、できるだけ糸を出さずに限界までとにかく耐えてみる。 そして、ふっと糸をゆるめてやるとこちらを向くこともある。レンギョや草魚などで練習してみるといい。

●取り込みは最後まで油断禁物

手前に障害物があれば、底を這っているうちは沖目で引き合う。

やがて一度水面に姿を出してもパワーを衰えないので注意が必要。 数回空気を吸わせると、横腹をみせるように素直になるが、 尾ビレの一撃で文字通り水の泡となる可能性もあり、 油断はできない。暴れさせないようにこちらも水に入って静かにタモ入れするくらいの配慮が欲しい。


頭から入れる。

頭から入れる。

網のワクをもつ。

無事上陸

ネットイン後はタモの柄とのジョイント部分が壊れやすいので、枠を両手で持つようにして岸まで運ぼう。 できれば仲間にアシストを頼むほうが安全だ。

●尾ビレを広げた状態で計測する。(小岩FFCの場合)

150センチクラスの巨体になると、計測方法により誤差はつきものだ。また、ヒレの傷つき具合でも違う。
川島さん青魚写真A
この155cmも
尾びれを伸ばせば
160cm級となる?!

小岩FFCでの全長計測は、全磯連の測定方法に習い、尾ビレを不自然にすぼめて伸ばすのではなく、 自然な状態で上下に広げた寸法を測っている。一般的な鯉クラブなどの計り方よりは、若干少なめになる。 (どうしても気になる場合は、両方の寸法を計っておけばよいと思う。


●大事にキャッチ&リリース

貴重な幻の魚はその巨大さゆえにランディング時には傷つきやすい。 なるべく早くリリースしよう。計測のために陸に揚げるときはビニールシートなどの上に魚を置こう。

また、魚のエラは人間の肺にあたり、ロープを通すと必ず傷がつくので、 非常の場合以外は、遠慮されたい。やむをえずロープでつなぐ場合は、綿製のやわらかなものを使用する。


ロープは口からエラに抜き、頭を回して、反対側のエラから再び口へ出して結ぶ。優しく!

ロープが乱杭など障害物に絡まないように注意。ペットボトルで浮かせるのも良い。

陸揚げしての検量・撮影などは、ビニールシートの上で扱いたい。

運ぶときはできれば二人以上で注意深く。腰を痛めぬように注意。


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