2006年2月18日〜21日、夫婦で三度目の台湾旅行をした。
中部の山上湖「日月潭」は五年ぶり、二回目。今回もアオウオ、コクレンを狙った。
結果はあいにくだったが、同湖の釣事情についてのさらなる知見を得られた。
次回の私自身の「三度目の正直」のためと、チャレンジを考える方のために可能な限りの情報を記す。
*前回の日月潭釣行記はこちら
*写真はすべてクリックで大きく見られます。
五年前の夏の釣行の経験から、日月潭の筏釣においてコクレンの好機と聞いた「冬」の時期で狙いを定め、今回の日程と計画を練り、2月19日(日)の朝と翌20日(月)、アオウオ狙いと合せて計一日半の竿出しを行った。しかし、結果は厳しいもので、完敗に終わった。
今回、現地釣具店や筏で会った複数の釣人から得た情報を集約すると、日月潭での両魚の釣りで重要なのはタイミングである。アオウオの好期は「夏の朝(深夜〜早朝)」で、コクレンにいいのは圧倒的に「冬の夜(日没〜深夜)」であり、この時期は難しいということであった。敗因の多くはつまるところタイミングにあった。
まずは時期。二月は日本の感覚ではまぎれもない「冬」まっさかりだが、熱帯と亜熱帯の中間に位置する台湾では、立春を過ぎた二月はもはや「春」。現地でいう冬とは旧暦の立冬(11月8日前後)から1月までという感覚らしい。今回の現地の気温は朝13℃、日中25℃。湖水の水温は18℃。確かに冬ではない。コクレンの好期から見ると少し遅すぎたということである。
しかし、日本の知見からすると、なぜ好期がそうなるのかがすぐには納得が行かなかった。確たる根拠は現地では得られなかったが、自分なりに仮説を考えてみた。
日月潭はもとは天然湖だが、日本統治時代に水力発電用のダムとして現在の形状となった。急峻な岸に囲まれ、岸から釣れる場所はほぼ皆無で、フロート構造で浮かぶ「筏」から直下の、水深12〜15mのポイントでの釣りとなる。それぞれの筏は可動式ではなく、頑丈な沖側の水底に沈められたアンカーと、岸辺側に渡したロープで基本的には岸から15〜20m程の位置に通年固定された位置にある。
季節・水温によってポイントは変わり、それに対応するのが全て釣りのセオリーである。船ならば移動できるし、岸からの釣りならば距離や場所を変えていくことになる。しかし、この湖の筏の位置は固定されていて、常に一定の場所を釣らざるを得ない。となると、タナを合せるしかないのだが、魚種による習性と釣法もあるから単純なものでない。筏からの釣りは結局、対象魚によって好時期がある程度決まってしまう。
ここではコクレンもアオウオも放流魚で、日本の利根川水系のような天然繁殖魚ではないから、産卵期は上流部に動くというセオリーは通用しない。春という水温、エサの分布を考えれば水深の浅い岸辺の岸壁に沿って回遊すると考えられるが、筏からはそれが物理的に狙えない。
底性の貝類を好むアオウオは、通年底狙いで深場も回遊の可能性はあるが、コクレンを狙って15m水深の底釣というのは、日本では考えにくい。この地では水温が10度を切ることはなく、越冬という寒さでもないが、おそらく冬はプランクトンの関係等で底に集まり、筏の位置の水深が適すようになるのだろう。
もうひとつの要因として考えられるのは時間帯。観光化された山上湖では週末の湖面は観光船やプレジャーボート往来も激しい。このような場所で、週末にかかるタイミングでは夜釣りが理想だ。旅行の目的が完全に釣りであればいいが、現実はそうも行かない制約もある。今回も早朝から日中の釣りであった。
これは台湾での一般論ではなく、あくまで日月潭という場所と、筏釣りという特性による私の仮説も含めた情報であることを付け加えておく。
熱帯と亜熱帯の境に位置する台湾は四季が明確でなく、実感としては「夏・夏・夏・秋・冬・春」という感じかもしれない。2月といえど、郊外をドライブするだけで畑には南国の果物があふれている。
イチゴ |
パイナップル |
バナナ |
パパイヤ |
九州ほどの大きさの台湾のほぼ中央に位置する日月潭は標高750m、周囲24キロの台湾最大の湖。台北からは数時間、台中から約一時間半の距離となる。深山に囲まれ風光明媚というにふさわしいこの湖は、台湾では有名な観光リゾート地。万里の長城や桂林山水とならんで「中国十大名勝」のひとつであり、「台湾八景」にも数えられる景勝地。
スペックやイメージ的には日本でいえば箱根の芦ノ湖に近いが、特徴的なのは水の色で、「翠」の印象。湖水の透明度は数メートルある。
1999年の台湾大地震の震源地はこの近辺であり、ホテルなど大打撃をうけた。2001年の訪問時にはまだその傷も生々しく観光客も少なかったが、現在では完全に復旧し、観光客も戻っている。
今回の宿泊は、湖畔に2003年にオープンした「THE LALU SUN MOON LAKE(ザ・ラルー)」。漢字名「涵碧樓(ハンビーロー)」。
日月潭髄一の景観を臨む高台に聳える涵碧樓は、かつての蒋介石の別荘として知られる。大正時代に日本人が建てた建築物で、戦前は日本高官らの保養所としても使われたという。
ここが2003年に台湾初のアマン系の本格的リゾートホテルとしてオープンし、海外からも注目されている。全室スイートルーム、スパが売りのデザイナーズホテル。「禅」をテーマにしたデザインはシンプルで趣味も良い。(アマン・グループは、世界最高のリゾート・ホテルのチェーングループ)
料金ははっきり行って超高級。一泊の料金はだいたい石鯛リールくらいから部屋によっては石鯛竿一本に匹敵する。今回は航空会社のマイレージポイントの利用で飛行機代はタダであり、結婚10周年という旅行なので、このホテルを選定。台北の夜市にも寄らず、空港から日月潭に直行直帰というリゾート滞在の旅とした。
アマン系リゾートといえば、その秀逸なコンシェルジェサービスが有名だ。今回は予約段階から英文メールのやりとりで、釣り関係の手配を依頼。コクレンとアオウオを狙いたいという奇特な客のわがままに対して、タニシの手配、筏の位置、渡船の手配など、粘り強くコーデーネートしてくれた。
客層は台北等の都市部のリッチな層中心の雰囲気。日本人も少々。絶景を楽しむ三泊の滞在は快適そのものだった。オシャレすぎて、タニシ袋を持ち込むような雰囲気ではないのが難点といえば難点か。
レイクビュー |
プールが特色。 |
ブーケのサービス。 |
湖から見たラルー |
入り口のシンボル |
60mの温水プール |
絵になるプールサイド |
シンプル・モダン |
照明も凝りまくり |
夕暮れの印象。 |
今回もお世話になったリリーさんと |
ふと、こういう写真が 撮りたくなる。 |
ミネラルウォーターもオリジナル? |
ザ・ラルー公式サイト その他参考サイト 1 2
18日の土曜日、成田を10時の午前便で立って、台北の国際空港からホテルの専用送迎車で直接日月潭に向かう。それでも現地到着は18時。移動で一日かかる日月潭はさすがに遠い。
今回の釣りに関することは、ホテルのコンシェルジュに英文メールでやりとりし、地元釣具店とのアレンジを事前に行ってもらった。主に釣場の予約と時間の調整、そこまでのアクセス手段、そしてエサの手配である。
ホテルの人間も釣りの専門的で具体的なことまでは詰め切れずこそばゆいが、英語が通じるのはホテルの人間まで、あとは台湾語がわからないとメールもできず、打つ手が無い。
到着後、日本語のわかるホテルのスタッフと湖畔の釣具店「明潭釣具」に向かう。コクレン用のエサや現地仕掛けなどを購入。今回の筏の予約もホテル経由でこの釣具店にしてあり、船付場からの送迎もここの店主、ヤンさんだ。
直近のコクレン、アオウオの釣況を店主にヒアリングする。アオウオは通年できるが、どちらかというと「夏の朝」で、コクレンにいいのは圧倒的に「冬の夜」であり、この時期はやはり難しいという。週末となると湖も騒がしく、日中の釣りではかなり難しいという状況を再認識する。
*アオウオ用のエサはコーンを想定したが、店主はやはりタニシを勧めるということで、タニシを手配しておいた。コマセ用含めて、事前に二十キロを予約。タニシの種類を確認したところ、現地で食用のヒメタニシではなく、「福寿螺」いわゆるジャンボタニシなので、小さめのものを予約しておいた。価格は10kgあたり400元=約1440円。
明潭釣具店内 |
壁の写真@ |
壁の写真A |
コクレンのアップ |
コクレンエサも数種あって コーナーになっている。 |
これはハクレンエサ だろうか?絵が怪しい。 |
前回使用した「大レンギョ」これがやはりおススメとのこと。 |
市販エサにこの専用ベースを混ぜる。 |
今回も、日月潭のふもとの街、埔里(プーリー)に住む「リリイさん」という女性に個人ガイドをしてもらった。前回もお世話になった御礼に食事でもということでお誘いしたが、結局、三日間、私が釣りしている間も、妻をいろいろフルアテンドで案内してくれた。ホテルの食事などはあまりにも高いので、結局ほとんどがローカルな店での彼女との食事となった。
初日の夕食に行った湖畔のレストランでは烏鰡=アオウオの料理を注文。五年ぶりのアオウオの滋味を堪能するが、やはりブリのような淡白な白身、適度に脂も乗ってうまい。
台北などの都市部ではなかなかチャンスがないが、アオウオはやはり台湾では人気のある魚。特にこのあたりの淡水魚を出すレストランならたいていメニューにあるはずだ。
前回報告したとおり、日月潭の筏釣は民間の釣具店や観光船業者によってそれぞれの好ポイントに設置されており、湖全体で10箇所くらいあるようだ。筏には「船屋」という部屋があり、蛍光灯や自炊設備、布団などがセットになっている。私の借りたところには麻雀卓もあった。
サイズは4名程度のグループ用から、それをいくつかつなげてある大きなものまでさまざまだが、完全予約制で、料金はいずれも渡船費用込みで一名500元(=1800円)の協定料金になっている。これは24時間あたりの料金となる。
利用形態としては、家族や数名のグループで、土曜日午後から食材や飲み物などを持ち込んで、日曜日の午前中まで朝まで楽しむというのが一般的なパターンのようだ。
今回、ホテルにはコクレンとアオウオの両魚に関して一番実績のある場所を希望ということで手配を依頼した。その筏はラルーの対岸、西遊記でおなじみの三蔵法師の霊骨の祀られた「玄光寺」の下になる。
ホテルのプライベート桟橋からこの筏まで送迎してもらい、約10分ほどの航程で到着する距離だ。
朝は5時30分にピックアップ、初日の日曜日はお昼まで、翌日は17時までの予約である。
現地の日の出は6時半。筏には煌々と明かりがついている。今回は三名ほどの泊まり釣人がいたが、到着時には竿を出したまま睡眠中だ。(センサーもなくどうするのだろうか?)
今回の筏は見た目はかなり渋いタイプだったが、設備はなかなか充実していて気持ちのいい空間だ。釣座はリール竿を置くパイプがはりめぐらされ、ほどよい高さで水平に竿をならべられる。イスやテーブル、玉網、フラシ、バケツ、秤などの釣周辺グッズも完備。掃除も行き届いていてデッキは裸足で歩けるほどなっている。
筏の全景。 ここの一番奥で二日間過ごした |
奥さんがお茶汲みと、 布団干しや掃除などにくる。 |
照明は発電機とバッテリー、 調理はガスボンベ。 |
この屋根が南国の雨と日差しを 遮ってくれる。快適。 |
船屋の室内。 清掃は行き届き清潔だ。 |
外側の黒いのは断熱材。 夜釣りも楽しそうだ。 |
テーブルやリクライニングチェア もあってリラックスできる。 |
今回届けてもらったランチ。 |
筏で知り合った若い釣人と、 筆談で青魚談義をした。 |
料金は同一なだけに、各業者、差別化のためにいろいろ趣向を凝らしているようだ。
この湖にアオウオは決して少なくない。二枚貝がダムの発電用の出水口を制御する装置に付着してしまい、台湾電力ではその駆除としてアオウオを放流しているくらいだ。また、釣魚としても食味としても人気のある魚だから、漁協としても毎年の稚魚放流もあるようだ。150cmを超える大物の釣果はあまりきかないが、これは仕掛け・タックルにもよるのだと思う。
今回私が竿を出す位置は、筏の中でもアオウオの実績が多い位置を、というリクエストをしておいたので、筏の一番奥の釣座に入る。
前回、地元名人のチヌ竿のような繊細な釣技を見ているだけに、タックルはかなり悩んだ。5.4mの竿では、筏直下での釣りには不便が多すぎた。平均サイズは1m未満の中〜小型が多いとはいっても、万が一の超大物の可能性も否定できない。結果、船の3.3mの真鯛・ワラサ用のムーチングロッドを三本用意。リールはアブの10000に道糸18号、仕掛けはソイ18号の2本針。日本で使用している仕掛けと同じ構造のものを基本にした。
寄エサを含めたエサはコーンも検討したが、現地釣具店では缶詰のものしか手配が難しく、日本から飼料用の乾燥コーンを大量に持ち込むのも気がひけることもあり、店主の勧めるタニシとした。タニシは「福寿螺」を計20kg、一日10Kgずつ用意してもらった。付けエサ以外の全てを朝のうちにポイントの真上から投入する作戦だ。
また、水深とコクレンの泳層把握用にハンディ魚探(無線の腕時計タイプではなく、7年前くらいに購入した有線のワンダースワンタイプ。精度と画面の大きさを優先)を持参した。この筏の私の釣座(沖側)の水深は15m。釣座の反対側(岸側)は12〜3mとややカケアガリになっている。時折水底で魚の反応があるが、何の魚かもわからず、アタリにはいたらない。
朝のうちは風のない湖面は緊張感たっぷりだが、日曜日の日中はやはり、観光船の往来が多く、かなり筏も揺れる。前回の夏の釣行時には、アオウオの水面でのモジリも数回、ポイント直下での糸ズレなども確認したが、今回はアオウオらしき気配を感じないままのどかな時間がながれる。
さて、私の用意したムーチングロッドは真鯛用の五十号タイプ。ヤンさんいわく、長さはいいが、やはり穂先が固く、アオウオには適さないという。翌日は彼の烏鰡竿を2本貸してくれるというので好意に甘えることにする。水深は15mだが、深すぎる気がするため、残りの2本を反対側の岸に向けて竿を出すが、なんら反応なく終わる。
他聞にもれず私はアオウオ好きだが、台湾まで私を誘うのはやはりコクレンの存在だ。この魚に関しては日本ではほぼ幻でいつまでも夢の域を出ないのが現実だからである。
特にこの湖では釣りも重要な観光資源にもなるので、アオウオ(烏鰡)とあわせレンギョが毎年数万匹単位で放流されている。台湾でレンギョといえばほぼコクレンのことを指し、現地名「大頭レン(ダートーレン)」は釣ファンの人気の魚だ。市販のエサも数種類市販され、仕掛けも専用の仕掛けが市販されている。
今回の戦略としては、向こうアワセの現地スタイルと、遊動ウキでの小西式というか日本式スタイルの両方で攻めることを想定し、現地スタイル用では3mのヒラメ竿、遊動ウキ用に3号の磯竿の二段構えで、道糸5号をアブの6500に巻いて臨んだ、。
さて、用具の面では今回は新た得られた知見が二つある。
【排骨鉤】
ひとつめは仕掛け。台湾といえば複数の針を仕込んだ「覇王鉤」(=ラセンがあって針がぶらさがる、日本でいう吸い込み仕掛けの発想)を想定していたが、今回、釣具店主が進めてくれたのは明譚釣具店のオリジナルの「排骨鉤」。
パーコー麺などをご存知かと思うが、排骨とはアバラ骨。文字でなんとなくイメージも伝わるかもしれないが、
この仕掛けを言葉で表現するのは難しいので、まず、写真を見てほしい。
・全体印象は海の胴付き仕掛けというか、八木アンテナのようなものだ。
・全体が30号クラスのナイロン糸で作られている。全長1mほどの幹糸から10cm程のハリスにチヌ針が、文字通りアバラ骨のように等間隔でしかもピンと張った状態で6対、計12本出ている。一番下にはスナップがあって、ここにナス型もしくは小田原オモリの小さなものを取り付ける構造。
・この仕掛けの一番下のオモリの周りにテニスボール大のダンゴを握り固め水底まで投入。
・エサは底についた状態で道糸を垂直に張った形でアタリを待つ。コクレンが寄って来ると溶解したエサとともにその上部にある針を吸い込む。
・金のチヌ針にはゴム管が刺されていて、しかもチモトは赤く着色されていて、これがルアーの効果を出す。
・エサは30分くらいで打ち返しが必要。
なんとも奇異な仕掛けだが、日月潭では抜群の効果が上がっているという。価格も普通の覇王鉤の25元(=90円)に対して120元(=312円)もする高級仕掛けだけにそれなりのご利益もありそうだ。今回はこれをメインに使った。
【黒粒】
もうひとつはエサ。現地で市販の粉末エサの購入を予定していたが、市販エサとブレンドする専用のベースエサを勧められ、これを使用する。名前は定かでないが、「黒粒」といったものだと思う。一般の店でも販売されているのかは不明。
比較的安価でキロ単位で購入。材料も不明だが、粉末を乾燥させた粒状のもので、バニラの香りがする。
価格はキロ売りで50元(=180円)と安い。これを水になじませ市販エサと半々にブレンドして使用する。
寄せエサとして、竿の周りにどんどん手で投げ入れるので、大量に必要だ。
今回は市販エサと合せて、二日間で計5kgほど購入して使用した。
使用した印象としては、黒粒を混ぜると粘りが強くバラケないエサとなる。これを先の排骨鉤のオモリを埋め込んで強く握り固めたテニスボール大のエサでは、実際に一時間以上も保ってしまう。
かなり横着な釣技だが、日本式の遊動式で中層を狙うには良し悪しだと思う。
1キロもしくは2キロ単位と思われる。 観賞魚のエサのようなたたずまい。 |
使用するときは固い粒をタライに入れ。 水に10分以上、なじませる。 |
市販のレンギョエサとブレンドして使用する。 |
市販エサは今回も 「大レンギョ」(50元=180円)を使用。 |
日本から持参したバニラエッセンスと アーモンドパウダーも混ぜてみた。 |
磯竿とヒラメ竿とも、排骨鉤仕掛けでのんびりとアタリを待つ。二日目は船竿のみによる二本出しとする。チョンチョンとアタリがあれば、アワセを入れるべくスタンバイする。
水深15mの各層を狙って、バラケエサ中心による日本式の遊動ウキ釣りでもチャレンジを試みる。 しかし、日が高くなると観光船による湖面の波と、筏自体の揺れでウキを見続けるのは厳しいものがあった。
ウキの周囲には大量の寄せエサを投入したため、底釣りで鯉っ子でも釣ろうとしたがそのアタリすらない。そもそも15mのタナの底釣りは遊動ウキでも沈下に時間がかかり、効率は良くない。
結局、郷に入れば郷に従う、のとおり、結局は現地式の横着な釣りを中心に組み立てた。暑い南国では確かにありだ。
しかし、なんの生態反応もなく・・・・。
日月潭でのコクレン釣りは、冬の夜釣りがベストという。肝心なのは、ここでいう冬は、日本の冬ではなく、旧暦の冬である。つまり10月からシーズンイン、11月がベスト、遅くても1月まで。これが今回の最大のボタンの掛け違いである。気づいたのは時すでにおそし。しかし、これが最大の収穫ともいえる。
しかも、時間帯は日没以降から深夜にかけての夜釣りがベストという。透明度が高い高地の湖での動物プランクトンの層の変化に加え、日中の騒がしい観光地ゆえのこともあるのではないかと推測。
その釣法として、ウキを使わない底釣りというのも、前述の仕掛けとエサならば理にかなっている。これ以外の釣り方では釣り場の水深が10数メートルと水深が深く、変化する泳層をなかなか取りきれないのではないかと思われる。また次回、泊まりの夜釣りでやるならば、センサーを使用してみるのも手もある。
日本の利根川水系などの常識や知見はここではなかなか通用しない。
日曜日の日月潭は騒がしく、午後は観光とした。リリーさんの案内で埔里(プーリー)市内各地を散策するうち、アオウオ釣堀=烏鰡池にチャレンジすることになった。以前にも報告したとおり、台湾のアオウオ釣堀(烏鰡池)の多さは半端ではない。中部の中型の都市である埔里市内を車で走るだけでも数箇所ある。
魚は別に鯉でもいいような気がするが、やはりその引きの強さと、成長の早さからもやはりアオウオが人気なのだ。池の消毒薬等の関係もあって、食味を楽しむためではなく、純粋なキャッチアンドリリース制のレジャーとしての釣りが大半のようだ。日本でいえばヘラ釣堀に近いと思う。
面白いのはアオウオ釣りがギャンブル要素の強いシステムになっていることだ。この池の場合では、入場料の一日1000元(=3600円)に対して、アオウオ一匹あたり300元(=約1080円)がキャッシュで還元される。つまり、4匹釣れば200元(=720円)もらえることになる。一日数百元を稼ぐことで、プロとして生計を立てている人間もいるという。すなわち、パチプロならぬ、アオウオプロが存在する。これで経営が成り立つということは、勝つ人がいればそれだけ負ける人もいるとことだろう。
池は2種類あって、メートル級が少数入っている池と、小型が多数入っている池がある。勝負で稼ぐつもりの場合は数狙い、大型を狙いたければリスク承知でということになる。
釣技と仕掛けもルール化されている。タックルは2.7m〜3mの烏鰡竿(アオウオ専用竿)にスピニングリール。仕掛けはヘラウキ状の遊動ウキに、2本針。エサはタニシ(福寿螺)を殻ごと身掛けにする。
2本針のハリスは水深にもよるが、2.5mと1.5mというふうに1m程度の段差をつけた超ロングハリス。短いハリスの針が水深に近い状態でウキの真下の水底にあり、もう一本の長いハリスは少し離れて斜めに水底にある具合だ。オモリは特に使用せず、タニシの重さで振り込むという、非常にユニークな仕掛けだ。道糸・ハリスは2号〜3号くらいまで、針の大きさもチヌの三号〜五号くらいまでの制限があるようだ。
今回は時間もなく、天候も悪いことからちょっと様子を見るつもりだったが、たまたまリリーさんの知り合いが池にいたので、竿を貸してもらい一匹だけのつもりで、小型の数多く入っている池でチャレンジ。
アタリは、20cm程のウキの細いトップがかすかに入る程度の繊細なもの。タニシをくわえてもプッとすぐ吐き出してしまうのか、確かにタイミングが難しい。この難しさを味わって初めて、このような道具立てなのが理解できてくる。たとえ空振りしても、タニシはエサ落ちもしないから何回でも再投入できる。
道糸がフケないよう構えて「ツン」のアタリを間髪いれず合せる、そのコツをつかむとアワセられるようになり、結果としては一時間ほどの間に四匹釣ってしまった。
雨の中、アタリをとらえて。 |
磯竿2号くらいの太さで 先調子の烏鰡竿。 |
ロングハリスなのでやはり あしらいにコツがいる |
なかなかいい引きをします。 大好きなアオそのもの。 |
小さいがその姿はやはりアオ。 |
うーん、アオウオです。 |
アオウオのネットイン、 うれしいシーン。 |
それなりに感激。 アオウオだから。 |
台湾での初アオウオ。 55cmくらい? |
私の自宅の水槽で飼っているものに毛が生えた程度だが、しっかりアオウオの形をした魚がタニシで釣れてくるのがなんとも愛らしい。
二度目の日月潭アタックはかくのごときで完敗、厳しい状況だったが、目標に対し、前回よりもまた踏み込んだ形での情報収集と体験を得た。
釣りのタイミングの問題の他、現地釣関係者から口をそろえて出てくるのは、いずれの魚も人気はあるが『非常難釣』であるということ。これは痛いほど承知している。しかし、コクレンとアオウオを狙うという、日本ではできそうでできない夢がそこにある。
もはや、ここで撤退するわけにはいかず、円が閉じるまで進むしかない。ここでめげると意味がない。仮説も検証しなければならない。
場所も釣法の要領もだいたいは押さえた。あとはタイミング選定さえ確かならば、次はイケると思う。
したがって、また三年以内にチャレンジする予定だ。もちろん照準はコクレンにあわせ、旧暦の冬の夜釣りで。
台中のバス乗場にて |
中台禅寺にて |
今回の遠征荷物 |
またここに来たい。 |
*文中の現地価格は1元(NT$)=3.6円で換算しています(2006年2月23日の為替レート)