2006年のリサーチ旅行にひきつづき、私にとっては二度目の中国渡航。
今回は、家族を伴った観光や、チョイの間の竿だしではない。アオウオを狙っての初の本格的釣行だ。
釣行地は安徽省明光市の石坝水庫(シーバーシュイク)、釣行は8/12〜14の二泊三日。
(中国への旅行日程は8/11〜19の9日間)
*写真はすべてクリックで大きく見られます。
日本から4名、上海在住者2名の計6名のチームでのアタック。
メンバーは上海在住の桜井さんと池田さん、岐阜市の舩戸さん(中国で十数年の駐在から2006年に帰国。桜井さんらとの縁をとりもっていただいた)、大阪から更井さん(フィッシングツアー会社)、そして東京から私と小岩FFC副会長の岡田さん。
利根川水系のアオウオ経験者は私と岡田さんの二名で、それぞれ好みの釣りのジャンルは異なるが、私のかねてからの中国チャレンジに共鳴していただいた皆様だ。舩戸さん、更井さんとは今回、初対面である。
この釣行団長は私で、これがスタート、今後も続くという意味で゛第一次゛と名づけた。上海を拠点としたプロジェクトは、今春からメーリングリストで連絡をとりあった。釣りには厳しい時期だが、メンバーの都合もあり、とりあえず夏休みの盆休みの計画となった。
目的地の選定は、@上海拠点から同日のアクセス移動が可能な長江デルタ地域(江蘇省、安徽省、浙江省にある郊外のダム湖で、A三年以内に180センチオーバー、もしくは100キロオーバーのアオウオの実存(捕獲または釣獲記録がネツト上で確認できること)という条件でリサーチを進めた。
その結果、2004年に174cm106kg、2005年に176cm114キロの捕獲記録のある江蘇省南京市の「金牛湖」と、2004年9月に174cm、73.5kgの釣り記録と、2005年に181cm88kgの捕獲記録のある安徽省明光市の「石坝水庫」の2つが候補となった。(中国の超級アオウオ参照)
中国のスケールは大きく、ひとつの省が小さな国くらいあって、韓国や台湾よりも大きい。
たとえば、安徽省は西日本(九州・四国)全体くらいある。地図で近そうだと思っても、日本の感覚とは縮尺がまったく違っていて、上に上げたダム湖でも上海からの距離は南京・金牛湖で300キロ、明光市の石ba水庫はさらに100キロ遠く、400キロ弱。
とりあえず南京金牛湖をターゲットとして、当初計画は進んでいたが、六月になってから石坝水庫に変更した。それは我々の釣行予定日の翌週に、第一回全国アオウオ釣り大会が開かれるという情報をキャッチしたこと。発起人は174cmを釣り上げた柳海氏。優勝賞金は24000元(=380,000円 *上海のサラリーマンの平均月収は3万円程度。地方都市の感覚ならば日本の1000万円くらいのインパクトだ)。参加人数をMAX300名としていることからも、釣座がそれなりに確保できることと、釣竿で届く距離にある程度の数の青魚がいることは間違ないと判断、有力な決め手とした。
湖の名前・所在がわかっても、実際の岸辺がどのような状況で、どのような釣り環境であるかということまではやはり情報収集にも限界がある。
そこで、7月始めに実際に舩戸さんの中国出張のついでに現地視察に行ってもらった上で、最終決定した。(上海から六時間以上寝台列車とタクシーにて)。
その写真で釣り場の地形や釣り座はほぼ事前把握できた。ポイントは石積みのある傾斜地でスパイクなどの装備とピトンなどが必要なこと、コクレンのウキ釣りをやるために、ヘラ台が必要なことも。
上海からの移動にはレンタカーを手配。(中国では外国人は国際免許でも運転できないため、ドライバー付ということになる)。メンバーは6名だが、荷物・物資を含めて全順(フォードのトランジット)というミニバスの16人乗りを借りた。ドライバーや高速代、燃料代などふくめて4日間で6万円ほど。
真夏の中国内陸部は暑い。8月の最高気温は日中40℃以上、夜でも35℃を切らないことが多いという地域。釣り人の体力的にも、水温的にも夜釣り中心の組み立てとなるが、アオウオ狙いのブッコミはやはり滞在時間がものをいう。
しかし、天候以上に心配だったのは釣り場の治安環境。昼間はともかく、夜では何があるかわからない。セキュリティ、天候対応を考えて、日本の鯉釣りがそうであるように、クルマを現地への移動手段のみならず、シェルターとして使うことにした。タックルの保安は無線センサーに盗難防止のコードを取り付けて、車中泊すれば、それでハード的には問題ない。
あとは、緊急時の言葉の問題となる。中国語を話せる今回のメンバーも皆が泊まりを希望しているわけではない。そこで、ドライバーを二人雇うことにした。運転手も中国人だから、ひとまず終夜体制の問題は解決となった。
ただし、釣り場まで三十分ほどの市街地のホテルは一応人数分の予約をした。
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最終的に調整されたスケジュールは、次のとおり。
・8月11日(土)上海集合、物資調達。車中泊で夜の高速を西に向かい、未明に現地着。
・釣りは12日(日)から14日(水)の朝までの約40時間。
・14日は南京金牛湖を視察して夜、上海に戻る。
8月11日、上海組は先に釣具屋でコクレン用のエサと、人数分のヘラ台、UVパラソルなどを購入。東京から我々の到着にあわせて合流。上海の大型スーパーで必要な物資を購入。関西空港からの更井さんの到着便を待って、21時に出発。
夜更けの高速を西に向かう。やがて深夜に南京を通過、はじめての揚子江を見る。さらに、1時間半ほどで明光市に到着。まだまだ真っ暗なので、市場が動き出す五時過ぎまで、車のエンジンを止めて一同仮眠する。
明光市は、市街といっても田舎でのどかなところ。耕運機や三輪バイクのようなタクシー、自転車、バイク。普通車タクシーの初乗り料金も上海11元に対して3元(約45円)というこから物価も想像できる。中国の朝は早く、夜明けから活気がある。
ホテルにチェックイン後、荷物を整理して、飛行機での移動に引き続いて、リクライニングしないシートでの車中泊はかなりきついため少し体を休める。
市場でアオウオ用のエサを調達。計画ではここでタニシ100kgを調達予定だった。しかし、思わぬアクシデント。なんと数週間続いていた洪水のため、タニシがまったく市場で流通していないという。やむをえず、10数キロのザリガニ、2俵の乾燥トウモロコシ(豚の飼料用)をコマセとして確保して釣り場へ望む。
石坝水庫は明光市街から郊外にクルマで20分程度の距離にあり、周囲7km程度。ダムというよりため池で、水深は5m〜10mほど。ただし、クルマでアクセスできるのは一部だけ。
今回は約1.5km、直線的につづく傾斜30度くらいの石堤の堰堤近くをポイントに定めた。事前調査の予定どおりだ。
堤沿いには未舗装の農道が走っており、ちょうど関東の霞ヶ浦や北浦のような雰囲気で竿を出せるのだが、こちらはずっと静かだ。日曜日だが、釣人は我々だけだ。
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石堤は傾斜30度くらいでそのまま水中に落ち込み、五メートルほどの水深までの駆け上がりを形成している。その先はフラットな泥底。石積みの岸辺にはタニシがついている。すなわち、アオウオのポイントとしての好条件を満たしている。
アオウオ狙いのエサには、ザリガニと岸辺のタニシを拾い集めて釣りをした。
釣り場環境は極めてのどか。丘陵地帯たが人口物があまり見えない。釣場の堤は農道を兼ねているが、不特定多数が通るわけではない。村の住民の耕運機とバイクが一時間に一、二度くらい通る程度。堤の裏側は四大魚の養魚池。
夕方になると公安警察がパトカーで泳ぎにきているほどの田舎。透明度は50センチくらいと中国のため池にしてはキレイだ。水浴びにきている女性や子供や、洗濯する主婦もいる。
夕方にはヤギが遊びに来る。子供も遊びに来て、幸せな釣場環境だ。
初日の午後、竿出しからわずか1時間ほどで岡田さんのセンサーが入る。
小岩FFCの現在の標準スタイルともなっているアオウオリグ(32番ワイヤーにPEY字ハリス、タマン針)に、エサは岸辺のヒメタニシ、片針は発砲スチロールのポップアップ仕掛け。
ゴクン、ゴクンと首を振る引き具合にアオであると確信、やがて水面に黒い背びれと尾びれが見えてくる。1mジャストのサイズながら、きれいなアオだった。その顔もまぎれもないアオウオだ。それもあたりまえ、ここが故郷なのだから。
大型とはいえないが、大陸初アオウオ。一同これは!と気合が入り、夜を徹しての覚悟を決める。
翌日は岡田さんの竿にソウギョがあたった。タニシの餌のブッコミにソウギョが来るというのも、発砲玉の威力だ。池田さんのタニシ+発砲に鯉もあたる。
レンギョは傾斜地に対応して人数分のへら台を容易。エサはコマセ用に豆腐粕(オカラ)を米袋1袋用意。20kgくらいあろうか、コマセとして大量に投入。やがてアタリは頻繁にくるが、初日はときおり針にかかるのはワタカの仲間やその他の小魚。
翌日はハクレンがあたってくる。しかし、すべて日本ではほとんどお目にかからない三十センチほどの幼魚で、フワフワのアタリをアワせてもほとんど乗らない。
やがて舩戸さんがコクレンを二匹追加したところで暑さでギブアップ。親魚を相手にした仕掛けや釣技では、このサイズの魚群には通用しない。へら竿にへら仕掛けで合せていかないと難しいだろう。はるか沖のほうでは型のいいモジリが確認できるが、今回はあきらめた。
今回、私自身はハクレン1匹だが、チームしての釣果は小型ながらも、アオウオ、ソウギョ、ハクレン、コクレン、鯉と五大魚が出揃う。
岡田さんのアオウオ100cm、ソウギョ82cm。池田さん鯉70cm、ハクレン30-40cm10匹以上、コクレン30-40cm2匹。
二泊三日の釣り。時間的はふだん週末と同じだ。釣り場現地への滞在は正味40時間強。
期間中は30度くらいと幸いにもしのぎやすかった。同地域では7月から豪雨洪水が続いており、私と岡田さんはアオウオ狙い、センサーを使用、車中にて仮眠をとりながら、日中、ホテルでシャワーを浴びに戻るというローテーションで昼夜のブッコミを行った。他メンバーはレンギョ狙い他とそれぞれの好みで釣りを展開。
今回使用したアウトドア用品は上海のスポーツ用品店と釣具店で調達。タープ、テーブル。ディレクターチェア、へら台、パラソルを人数分。クーラーは高いため、発砲スチロール箱で対応した。
現場での食事はテークアウトのものをタクシーなどでデリバリーさせることで対応。飲み物用の氷は田舎では手に入らず、ペットボトルなどのお茶はお湯状態ではあったが・・・。
夜はタープでランタンのあかりでビールを、と目論んだが、とにかく夜の虫の多さに閉口した。日没と同時に蚊や羽虫が石積みの間からわ沸いてくる感じ。ライトをつけると口や耳に入ってしまうほどで、蚊取り線香では対抗しきれる量ではない。屋根だけのタープは使い物にならない。四面オールメッシュのスクリーンタープが必要だが、中国では入手できない。次回は別途船便で送付するか、検討が必要だ。
このあたりには、外国人(日本人)もあまりきたことないようだ。上海のナンバーのクルマ、日本人、見慣れない釣具、しかも東京からわざわざきているというようなことで物珍しい存在だったのだろう。そこには異質な者を排除するという空気はみじんもなく、友好的なムードの中で過ごすことができた。
結果的に問題なく釣りが展開できたのは、この石坝水庫の老板(ラオバン=支配人、責任者)といい関係でできたことが大きいと思う。このあたりの村でワイシャツに革靴の服装は彼だけ、髪の毛も整い、こざっぱりした身なりで、クルマも持っている。有力者のお坊ちゃんなのだろう。
彼は釣り人からの料金(1日10元=150円程度)徴収も行うが、当局に雇われている人間ではなくて、この湖の実質的なオーナーであり、魚の放流も毎年数十万円入れているという。
漁業などの水揚げが収入になると想像するが、おそらく周辺の土地なども仕切っている地主的な資産家なのであろう。とはいえ、よほど暇と思える。何度も我々のタープに顔出しをして、夕方には紹興酒をのんびりとやって、釣り見物し、そこには近所の若者や主婦なども寄っていく。魚をあげるとよろこんで、家に飯を食いに来いと何度も誘ってくれた。
夜中に迷彩服にバイクであらわれた3人組の若者には少々緊張したが、携帯で何事か彼に連絡を取ったのだろう、コロリと態度も変わり、タバコを勧めてきたり、終始、好意的なものだった。老板に雇われてて、漁者などを取り締まっているそうだ。
要はあの人が認知しているならば、、あいつら、怪しいモノではないよ、という部分。これが今回、湖岸での昼夜の竿だしを不安なく成立させる一番の強いアドバンテージとなった。中国の野釣りではこういう要素が不可欠と思う。
上海への帰途、今回の計画最初の目的地であった南京金牛湖に立ち寄り、この湖で2004年に捕獲された106kgと2005年に捕獲された176cm114kgの2体のアオウオの標本を見学した。(ここでの106kgの説明版には全長186cmとされているが、剥製の計測全長は174.2cm 体高39.2cm (中国の超級アオウオ参照)
魚展館の入り口には「中華第一青魚」と銘打たれている。このスーパーアオウオを観光客に見せるためだけにわざわざに作成された施設のようだ。
景色は良いが、湖はだいぶ観光地化さされていて落ち着いて釣りできるムードではなさそうだ。
利根川・江戸川で天然繁殖のネイティブが狙えるのに、なぜわざわざ中国まで行って湖に放流されたアオウオを狙うのか?。
それは、中国が彼らの故郷であること、そして、日本では一生超えられないかもしれない大台を超える夢を見るためだ。
しかし、それが、一度や二度で簡単にかなうものではないことは痛いほどわかっている。
今回の目標は、まず、全員無事にベストを尽くして釣りを楽しみ、全員が事故怪我なく無事帰ることだった。釣果は大型はでなかったが、五大魚がそろった。まあ、第一回のアタックは大成功としたい。
そして、日本の技巧・スタイルが、中国大陸で十分展開できることが確認できたことは、日本の淡水大魚釣界にとっても、大きな成果だったと思う
このプロジェクトが実現できたのは、なによりも中国在住の釣り好きの方とネットワークができてチームを組めたこと。言葉の問題もあり、外国人旅行者が個人単独で中国で釣りを行うことはまず不可能だ。
中国は広すぎる。でも、今回は夢に向かってゆったり竿出せる場所をついに見つけた。
石坝水庫。ここが本当の桃源郷かどうかはまだわからないが、全員一致でまた来て見たいといえる場所を見つけたことは確かだ。
それにしても真夏の釣りは厳しすぎる。台風のリスク、雷雨、酷暑、そして夜は虫も多い・・。
次回、「第二次中国青魚釣行団」は来年9月の下旬に再度アタックすることとしたい。
この4月から中国語会話教室に通いはじめたが、私の中国語もまだ3ヶ月ではまだ、なかなか。
でも、あと一年やれば少しはなんとかなるだろう。
2007年8月31日
*石坝水庫には2007年6月に中国のダイワ精工の現地法人社長をはじめとする一行もアオウオ狙いで訪れている。記事
*石坝水庫にて8/22〜25に開催予定だった「第一回全国青魚釣り大会」は水位が高く釣りに適さないというため9月に延期された。中国でもアオウオ釣りが盛んになることは間違いない。
上海での宿泊は不動産業を営む池田さんに賃貸していただいたウィークリーマンション。また、雑技団の最前列のチケットのご手配や、会社のスタッフの女性を観光案内につけていただきました。ありがとうございました。