2005年
水温11℃、 晩秋の13泊の末の一発。 11月28日(月)夜、利根川にて名取川氏、164cm |
2005年現在、日本の利根川水系全体で、
アオウオを専門に狙うファンは、
実質100〜150名程度と思われる。
シーズン中、ほぼ毎週のアタックで
費やす時間は一人あたり平均、
500〜1000時間程度といったところだろうか。
彼らによって、一年間に釣りあげられるアオウオは、
計100〜150本と推測される。
単純計算で、一年に一人あたり平均一本。
投資(時間)と利益(結果)という観点で、
これほど効率の悪い釣りは例がない。
そして、これだけ、ハードルの高い釣りだから、
たとえ年間ゼロでもなんら恥じることはない。
◆
その年間100〜150本と推測される全釣果のうち、
160cmを超える個体は例年、年間1〜3匹程度。
わずか、1〜3%の確率の貴重なもの。
ここ15年ほどの近代アオウオ釣りの歴史でも、
170cm超はわずか一本であり、160cm台が
個体の成長そして寿命のリミットに近いことを物語る。
160cmオーバーは、やはり究極のボーダーラインであり、夢の大台である。
◆
アオ師の9割が「週末型」だが、
五日〜一週間単位の「滞在型」を
メインとするアオ師が、数名いる。
名取川さんも今年から建築業をリタイヤして、
悠々自適な滞在型を展開する一人だ。
多くの釣人が竿を納めだす晩秋。
11月末の冷え込み厳しい闇夜、
枯れススキの広い川原で孤独に耐え、
ついに13泊の末に、160オーバーを単独ランディング。
夢を信じる情熱と執念に、
心から祝福と、敬意を表したい。
◆
青魚倶楽部で確認された
今年7匹目の160の大台超え。
全般的には、決して好調とはいえなかったが、
2005年は、結果として、歴史に残る
超大型ラッシュとなった。
Siamese Giant Carp 現地名:パーカーホ(PlaCaho) 135cm40kg 9月25日(日)、16:30 タイ王国・バンコクにて |
ヒゲがない魚を「鯉」と呼ぶのは
日本では少々はばかられるが、
アオウオ=BlackCarpは間違いなく、
世界最大級の「鯉」である。
そして、その大きさからいって、アオウオと唯一、
双肩を並べる魚種がタイの巨鯉、
パーカーホこと、Siamese Giant Carp。
体形・風貌こそだいぶ異なるが、
その優美なヒレ、漆黒の巨体は
タイのアオウオとでも呼べば良いか。
とにかく同じアジアに、こんな魚がいるのだから、
釣らずにはいられない。
もはや理屈ではない。
秋の三連休を利用して、二度目のタイへ。
三年前、メートル級のパーカーホを釣り上げながら、
写真に撮れなかったのが大変な心残りとなった
あの湖に、今回はテレビカメラを連れて。
ブンサムランで出迎えてくれたのは、
ジャン・フランソワ・エリアス。
私がこの魚に魅了されるきっかけとなった
写真の張本人と、三年ぶりの再会となった。
あのスキンヘッドも、現地人ガイドも、バンガローも、
過ぎた時間を除いてすべて同じ。
最終日の残り一時間少々、
夕暮れ近く、最後の最後で食ってきた。
検量後、ネットのまま、背後の浅場に運ぶ。
ふと前回の悪夢を思い出すが、
珠玉の魚体を大事に扱おうというフランソワの流儀だ。
生涯2匹目のパーカーホ。
恋焦がれ、巡りめぐった、因縁の魚。
東京から4500km。北緯13度の熱帯で、
水中での撮影儀式は、今度こそ無事終わり、
旅は成就した。
ついに、円は閉じた。
★今回の釣行記はこちら★
苦節3年。 なんと、初アオウオがこのサイズ。 7月10日、風見 幹氏、利根川にて初アオウオ。 問答無用の165cm! |
青魚倶楽部がご縁で、奇特な世界に足を踏み入れた
風見さんより、初アオウオ、
しかも、大変な快挙の報を頂きました。
まさに夢を信ずるものだけが出会える感動の現実が、
見事に凝縮された素晴らしいメールをご紹介します。
本当におめでとうございます。
3年前の早春に茂木さんの著書である
”トーキョーアオウオ生活”を高田馬場の書店で偶然見つけ、
購入し、感銘を受け、ホームページを拝見し、
感想などを込めたメールを送信いたしました。
その後、茂木さんから返信のメールを頂き、その内容は
「ぜひアオウオ釣りをいかがですか」というものでした。
(中略)
それから約3年間、冬以外のほぼ毎週末は
利根川に通うという生活がはじまりました。
最初のうちは「健康のために釣りはいいんじゃない」
と言っていた家内も、半年を過ぎたあたりから、
表情がこわばってきてしまいました(笑)。
その間、地元野田産のタニシを採取し餌とし、
90オーバーを筆頭に約70匹の鯉を釣り上げましたが、
アオウオはかすりもしませんでした。
この経験からアオウオはこの辺りでは釣れないものだという、
妙な安心感を持つようになっていました。
ところが、その時は突然来てしまいました。
7月10日朝7時30分頃、
いつもの釣り座でビール飲みながらぼーっとしていると、
竿の締め込みは小さいけれど道糸がゆっくりとスプールから
出続けるという、今までに見たことの無い当たりが来ました。
慌てて竿を持ち合わせると、
一気に走り出し道糸が50メーター程出てしまいました。
また、当日は増水しており流れも普段より強かったようです。
その後、沖の方で、青黒い扇子の様な尻鰭が見え
私の心の中は「アオウオが本当に掛かっちゃったよ」
という恐怖を感じ体が震えてしまいました。
それからは地獄の様なやりとりが始まりました。
近くに寄せては数十メーター糸を出されるというやりとりを
10回以上くり返しました。
約50分間やりとりをしましたが、約30分を過ぎた付近からは
足の疲労で立っていられず、近くのヘラ台に座り込んで、
まるでトローリングのようになってしまいました(笑)。
アオウオがようやく弱ってきたところで、腰まで水に浸かり
なんとかタモ入れをし、ロープに繋ぐことができました。
取り込み後は、釣り場で知り合った地元釣り師の方々に応援
を頼み来てもらい、陸揚げ、計測、魚拓の作成、写真撮影を
一緒にしていただきました。
今回釣り上げたアオウオは、全長165センチメートル、
体重はとにかく重かった(笑)、抱卵したメスでした。
その後、陸揚げしたアオウオは、無事に利根の流れに
帰って行きました。本当に安心しました。
目の前で釣り上げたアオウオの息が絶えたりしたら、
一生後悔したことでしょう。
反省点は、陸揚げ後の魚拓というイベントのことで
全員の頭がいっぱいになってしまい、
写真撮影の前に墨でアオウオを汚してしまった事です(笑)。
今回、私は単独でこのアオウオを取り込むことができて、
自分が成長したとともに、漠然としていますが
物事の価値観が変わってしまったような気がします。
また、将来に認知症などに陥ることがあっても、
絶対に忘れることの出来ない、
大きな思い出を手に入れることができました。
今後、これほどの大魚に巡り逢えるか分かりませんが、
永く利根川と付き合って行きたいと思います。
2005年6月、茨城県玉造町内のホソにて。
このシルエット、たたずまい 稚魚を飼育しているファンならば ピンとくるだろう。 なお、両魚は現在水槽にて飼育中。 |
きっかけは、ひょっとしてアオウオではと、
読者からメールで送信された写真。
◆
> 玉造町内の名もない用水路で、
タナゴ釣りの外道として釣れたものです。
> 田んぼやハス田の中を流れている
幅1m強の三面護岸の水路です。
> 他にはタイリクバラタナゴ、アカヒレタビラ、
マブナ、オイカワが釣れました。
> 餌はマルキューのグルテン1です。
> 水族館や写真でしか見たことはないのですが、
ハクレンの浮き釣りに興味があり、
茂木様の「トーキョーアオウオ生活」を読んでいたため、
アオウオではないのか?と感じ、キープしてまいりました。
◆
青魚倶楽部では、
ヒレ形状・色、シルエット、ウロコの配列、側線、
口の尖り方、口の下方への伸び方から、
アオウオの稚魚と同定。
◆
アオウオは一メートルを切るものは稀れで、
幼魚が釣れない不思議をずっと感じていた。
が、これで謎だった幼少魚の居場所が、
水郷エリアのホソという、仮説がほぼ検証された。
そして、天然繁殖の営みの確証となった。
しかも一匹ではないから確実。
すなわち、アオウオの生態研究にとっての大きな進歩。
このクラスは水郷エリアでは
おそらく過去にも相当数釣れているはず。
しかし、残念ながら、青魚の姿や名前を知る人は多くない。
ましてや稚魚となれば。
「雑魚」感あふれる魚体はそのまま「?」と
ポイ!されていたに違いない。
両魚は竿で釣り上げられたものとして、
アオウオ日本最小記録と、同二位と認定したい。
しかも、日本の淡水魚最大級の魚が、
タナゴという最小級の釣りで釣れたという妙。
なんとも愉快だ。
撮影:茂木 薫 |
川島孝文氏、5月13日(金)、160cm 東京都葛飾区柴又、矢切の渡しにて 推定体重65〜70Kg
今回、シャッターを押したのは通りかかりの河川工事員。 いささか、写真のクォリティ、アングルは惜しまれるが、 そこは平日、夕刻の岸辺。無理は言えまい。 |
江戸川春大会のラストドラマは、
文句なしのスーパーアオウオでフィナーレ。
舞台は全国知名度の葛飾柴又、矢切の渡し。
役者は、またもや川島さん(小岩FFC)。
2年連続160オーバー。
快挙というよりは<奇跡の偉業>が
今、達成された。
2年連続GW明けのメークドラマ。
今回も一時間20分の大格闘。
午後2時半、鯉狙いの仕掛けに食ってきた。
5号PEハリスで無理はできない。
職人的な竿さばきで剛力をいなし、
小柄な自身の体躯を凌駕しそうなグラマーを
ようやく取り込んだのは3時50分。
◆
160センチはファンの究極の到達点であると同時に、
生物学的にも社会的にも貴重な貴重なアーカイブ。
利根川からの2連発に続き、
今度は江戸川の160センチオーバー。
わずか一ヶ月で釣友の3本のスーバーアオウオ。
各個体の個性にも興味はつきず、その雄姿を
ここで紹介できたことは管理人冥利。
見よ、この圧倒的な官能の巨体を・・・
一釣人として、オトコとして、胸が熱く奮い立つ。
そして、ここは東京。
鈴木勉氏、 5月7日(土)、利根川にて161cm
|
GW終盤の土曜深夜、
鈴木勉氏(利根川青師軍団)の快挙。
皆が夢見る160オーバー、
氏にとっては2匹目、実に12年ぶり。
なおもとどまらないアオウオへの情熱が昂じて、
4月にこの釣り場近くに居を移した同氏に、
その甲斐あっての一発。
粘りに粘って迎えた、ポイント滞在9目目の夜。
◆
スタートダッシュですでに100m以上の糸を
引き出される激しい状況。
石鯛竿をバットから捻じ曲げ、
なおもドラグから容赦なく糸を引き出していく。
16号の道糸も残り20〜30m、
150mを超えるかなたから、
45分後に引き寄せた巨体は161cm。
◆
アオウオの引きが強い弱いという論議がある。
流速による差はもちろん
個体差は確かにある。
しかし、玄人中の玄人、アオウオの猛者の
万全のタックルと強靭な体躯をもってして、
渾身の45分のファイトにもちこんだこの魚。
その絶対的なパワーが
いかなるものか想像してほしい。
まさに問答無用、大男も引きずる牛の如き剛力。
◆
嗚呼、狂おしく、素晴らしきかなアオウオ釣り。
鯉97cm矢ヶ崎君 4月15日(金)、利根川にて97cm |
ヤン様こと、梁相龍氏。
利根川下流部の主要ポイントに通うファンならば
この人を知らない人は少ないだろう。
わずか2年で、約40本のアオウオを手中に
一躍、日本青魚界のトップランナーに。
◆
とにかく、常軌を逸した情熱の猛者である。
2〜3週間単位で、テントで泊り込む滞在型は、
かつてない最強の青師スタイル。
釣行日数は年間300日を超える。
◆
闇の孤独と寒風酷暑に耐え、
数週間もひたすらアタリを待つ。
社会通念では狂気の沙汰と思われるだろうが、
そこまで熱くさせるのも、魔性の魚、
アオウオの魅力ゆえ。
◆
2005年春のベストシーズン、アオウオ3年目にして
ついに悲願の160オーバーを達成。
ヤンさん、おめでとう!
4月9日(土)未明、 市川橋上流東京側(北小岩)にて97cm |
ヒバリさえずり、目に桜。
江戸川はベストシーズンを迎えた。
水温はここ一週間で5℃も上昇。
◆
都内の高校二年生、田代君は、
先週に引き続き、仲間と江戸川・小岩へ。
自転車で釣り場に入ったのは深夜。
エサは食パン、岸から5mに投入。
未明に、未体験の大アタリ。
◆
メートルをわずかにかけたが、
このサイズの鯉は、江戸川全体でも、
年に一本、出るか出ないかの貴重なサイズ。
たどりつけるのは
よほどの幸運に恵まれた人間のみ。
一生もののメモリアルサイズを、
16才にしてつかんだラッキーボーイ。
春の夢のような出来事。
彼がどのような釣人生を歩むにせよ、
この日を一生、忘れないだろう。
おめでとう
1月4日(火)、新中川・小岩大橋下流にて
|
東京湾に流れ込む各河川の下流部では
真冬の風物詩、ゴカイのバチ抜けシーズン到来。
今年も鯉の良型ラッシュが展開されている。
◆
1月4日、新中川でメーターをゆうに超える106cm。
釣人は地元アオ師、井原清隆氏。
ヘルスメーターで抱いて計った重量は20Kg。
◆
小型のアオウオかと思うほどの強い引きだったとのこと
まさにサプライズ、記録級の一匹。
昨年に引き続き、また彼がやってくれた。拍手。